第64話 隠れ里の魔(7)
行きの時にある程度の整地をしていたこともあり、かなり順調に進んでいった。
アイテムストレージに収納してあった青い石も設置しながら山を登り、途中には休憩もできるようなベンチもクラフトしていく。
ゴギョウは歩きながら慣れた手つきで大小石ころを回収し、また慣れた手つきで石の灯籠や手すりをクラフトして設置。足元は固く、崩れにくいよう均していく。
ひらひらと手を扇ぐように動かし、歩みを止めることなく進んでいく。
ゴギョウの後ろを行くオットは驚きに目を張り、口も半開きに言葉を失う。
「魔法より魔法みてえだな…、あんた」
「ん?そうですか?」
「歩きながら道が出来たんだ、普通じゃないだろう。ゴギョウの仲間もそんなことができるのか?」
「ああ、街にいる人たちですね。…たぶん、あんまりこんなクラフトはしていないと思います。崖をくり抜いて家にしたり、大きな塀を作ってはいましたけど」
「十分にすごそうだな…」
しばらく歩くと、遠くにぼんやり塔が見えて来た。
オットはここへ戻ってくるのが久しぶりだからなのか、感慨深げにそれを見つめる。
近づくにつれ塔だけでなく背の低い石の囲いが現れ、その先には道が敷かれ建物の土台なども見えてきた。
「すごいな、これもアンタがひとりでやったのか…」
低い石塀を越え、青い石の安全地帯を歩きながらオットは感嘆の声を上げる。
「まだまだ出来ていませんよ。シャギアが材料も少し分けてくれますけど、建物の壁なんかは足りなくて」
「ああ、それで白土を。あれは雨風に強いからなあ」
「しろつちって言うんですね。湖の底に沢山あったのでいくらか持ってきてるんで、この後加工してみようと思ってます」
塔のそばを見ると植えていた木も少し成長しているようだった。
毒の沼地と同じよう、クラフトスキルで植えたものは短い期間で成長するのだろう。
野菜や食べるものも、もっとあると安心なのだが…。
塔の前には大きな猫が丸くなっているのが見えた。
「シャギア!」
オットが大きな声で呼び、手を振りながら駆け寄る。
「よかった、無事だったんだな」
「あら、久しぶりね。子供たちは来ていないの?」
起き上がり体を向けて、シャギアは優しい声で話す。
「ああ、今日は俺だけだ。本当に安全なのか確かめたくてな」
「ンフフ…それだけ?」
聡い猫である。オットがひとりで来た目的もシャギアは察しているようだった。
「……あの魔法と、影になった転移者のことをこいつにも教えた方がいいだろうと思ってな」
一行は塔の、シャギアの部屋に入り、話をすることとなった。
そして、ゴギョウはこの霧で隠されたアリアの里な魔法と転移者たち。それをめぐる一連の過去を知ることになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます