第63話 隠れ里の魔(6)
翌朝、ゴギョウとオットは霧のかかる中を歩いていた。
辺りは見通しが悪く背の低い草に紛れた岩などを踏まないよう気をつけてすすむ。
ゴギョウは歩きながらそれらの岩などを拾いストレージに収めていく。
しばらくすると足元は草原のような体から岩場へと徐々に変化していく。
昨夜はオット、ダン家族らとこの山や、里の話を聞かせてもらった。
数年前、アキアの里を襲ったのは転移者であったらしい。
自分たちはこの世界の人間ではなく、違う世界から来たのだと口々に言っていたらしい。
初めは敵対や乱暴を働くような雰囲気ではなく、和やかなものだったらしい。
たった十数人で、異なる世界に戸惑い途方に暮れていた風の者たち。
しばらくしてある日、そのうちの一人が「まるで“げーむ”の世界ではないか」と言い出した。
オットたちにはその“げーむ”がわからない。
彼等はスキルの存在に気付き、使い始めた。
ゴギョウははじめ、そのスキルがクラフトスキルのことかと考えた。
しかし、それは違った。他者から魔法を、あるいは学び、あるいはコピーし、あるいは奪うものだったのだそうだ。
ゴギョウのプレイしたクラフトアドベンチャーワールドオンラインにそんなものはなかったはずである。
もちろんクラフトしかしていなかったゴギョウが知らないだけだったのかもしれないが、これまでに会った転移者たちもそんなスキルの話はしていなかった。
皆、クラフトスキルを駆使してこの世界に生きていた。
もちろんクラフトスキルは十分にチートと読んで差し支えのない能力であったし、レベルの上がりやすさなんかも転移者の生存率の助けになっていたはずである。
しかし、オットたちの話では彼等の里に現れた者たちはクラフトスキルなどなく、魔法を使うというスキルであったらしい。
そしてその転移者たちが自らの能力に気がつくと、彼等を扇動するものが現れたという。
それは美しく若い女性だったという。初めからいたのではなくある日、突然に彼等の一団に加わっていたらしい。
何故、急に攻撃的になったのか。
それは、アリアの里に伝わる魔法を奪うためだった。
まずは里にありふれた魔法。水や火を操る魔法がほとんど奪われた。
奪われた者は魔力も失くし、その命までが奪われた。
数十人いた里の人間は殆どが殺され、生き残った者は少なく命からがら逃げ出したらしい。
最も重要な魔法が奪われると、追跡などはなくオットたちにはあの場所に落ち着いた。
里の跡に徘徊していた黒い影どもは、転移者らで、影であるのはその奪われた魔法が関係しているらしい。
ゴギョウはこのままシャギアのいる塔に戻り、オットと共に奪われた魔法と影について聞くこととなったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます