58話 個性が際立つ納涼方法

 暑さを凌ぐ方法は、いろいろと思い付く。

 手っ取り早いのは、エアコンや扇風機など文明の利器に頼ること。


「悠理に息を吹きかけてもらうのはどうかしらぁ❤ ふーふーって体の隅々まで❤ 想像するだけで興奮して、体が火照っちゃう❤」


 火照ったらダメなんじゃないですか。というツッコミは野暮というもの。

 姫歌先輩の発言に他の三人も同意気味にうなずいているので、私は正論を振りかざすことなく、空気を読んで黙っておく。

 実際に涼しいかどうかはさておき、私も先輩たちに体の隅々まで息を吹きかけてもらいたい。


「あーしは裸になって肌を擦り合わせるのがいいと思うな~。続けてたら体温上がるだろうけど、服を脱いですぐならひんやりしてるだろうし」


 服を脱ぐだけで涼しいのでは? なんて指摘も、もちろんしない。

 もちろん会話に混ざりはするけど、流れを阻害するようなツッコミは控える。

 ところで、実際に裸になって肌を擦り合わせるなんて過激な行為に及べば、興奮のあまり大変なことになるに違いない。


「ゆ、悠理の脱ぎたての水着に、頬ずり、する、とか」


「冷たい視線で睨まれるのもよさそうね」


 アリス先輩と真里亜先輩も、各々の個性を爆発させた考えを述べる。

 脱ぎたての水着はおそらく冷たいので、濡れタオルと同程度には効果的かもしれない。パンツや靴下と同じで決してきれいな物じゃないから、渡すのは抵抗があるけど。

 冷たい視線で睨むのは、きっと真里亜先輩が想定するほどの効果を生まないだろう。たとえ絶対零度の眼差しを心がけたところで、先輩たちを見つめていれば自然と熱っぽい視線に変わってしまうのだから。

 ちなみに私からは、全員で楽しめるプールや水風呂を提案させてもらった。

 心の奥ではラッキースケベ的なハプニングを期待していたりするけど、ありふれた発想だよね。

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