48話 バストアップ?

 金曜日の放課後、いつにも増して執拗に胸を揉まれている。


「うんうん、やっぱり悠理のおっぱい揉んでると落ち着く~」


 おとなしくイスに座る私の背後に立った葵先輩が、腋の下から腕を通して左右の乳房を鷲掴みにし、パン生地をこねるように指や手のひらを絶え間なく動かす。

 特筆するほどの性感帯というわけではないけど、敏感な場所であることは事実であり、好きな人に触られているとなれば刺激はことさら強い。

 いつもスキンシップ感覚で揉まれているときだって襲い来る快感と必死に戦っているのに、ここまで本格的に攻められると我慢するのも一苦労だ。


「ぁんっ――けほっ、けほっ」


 油断して嬌声が漏れ、ごまかすように咳払いをする。


「土日会えない分も、いまのうちにしっかり揉んでおかないとね~。うりうり~」


 有言実行しつつ、顔を私の肩辺りから覗かせ、頬を擦り付けてきた。


「あっ、そうだ! これだけ揉んでたら、バストアップ効果があるかも!」


 頬ずりをピタリと止め、耳元で大声を出す葵先輩。

 唐突な大音量に耳がキーンとなったものの、葵先輩のきれいな声に刺激されるのだから、私の鼓膜も喜んでいるはず。いや、さすがに無理があるかな。


「バストアップですか、それはかなり魅力的です」


 私は神妙な面持ちで、ポツリとつぶやく。

 いまのままでも平均的なサイズだとは思うけど、巨乳に憧れがないと言えば嘘になる。

 Eは無理でも、Dカップなら……?


「ま、ただの迷信って説もあるけど~」


 それもそうだ。

 でも、期待するのは決して悪いことじゃない。自己暗示でバストアップ、という可能性だってある。


「お腹は揉まないでくださいね」


 仮に揉まれて大きくなるのが事実なら、お腹や脚は勘弁してほしい。

 真意を察してくれたらしく、葵先輩はクスッと笑いながら「りょーかいっ」と明るく返事をしてくれた。

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