32話 息抜き①
「みんな注目! 今日はいい物を持って来たよ~!」
葵先輩が元気な声を部室に響かせつつ立ち上がり、バク転でロッカーまで移動。
バク転を容易く行う身体能力は言わずもがな、着崩した制服の裾がめくれて露出したお腹の美しさに見惚れ、私は無意識のうちにパチパチと両手を鳴らしていた。
「じゃ~んっ! 驚かせようと思って、昼休みにこっそり忍ばせておいたの!」
もったいぶるのは性に合わないとばかりに、バク転に対する部員たちの拍手を浴びつつロッカーを開ける。
普段あまり利用されることのない収納設備の中から、ホームセンターで売られているようなバドミントンのセットが顔を出した。
「もしかして、ここでやるんですか?」
他の部室よりは多少広いとはいえ、バドミントンを行えるほどの余裕はない。
「あははっ、違うよ~。部室の隣にちょっとしたスペースがあるから、そこでね。後で作業の息抜きにみんなでやろうよ!」
「あらあら❤ 素晴らしい考えねぇ❤」
姫歌先輩が絶賛し、アリス先輩と真里亜先輩も同調する。もちろん私も大いに賛成だ。
座ったまま一つの作業に集中する時間が長い部活なので、適度な運動はいろんな意味で望ましい。
「あ、汗をかいたら、悠理の腋とか、足の裏を、嗅ぐ」
テーブルの下で太ももの付け根辺りに頬ずりしながら、アリス先輩が宣言する。
『嗅ぎたい』ではなく『嗅ぐ』と断言したところに、意思の強さが表れていた。
「悠理にラケットで思い切り叩いてほしいわね。頭から爪先まで、ムチを振るうようにビシバシと」
「実際にやられたら、また派手にイっちゃうかもよ~?」
「うふふ❤ 昨日は本当にすごかったわぁ❤」
先輩たちの会話を聞いて、脳内に映像が浮かぶ。
あのときの真里亜先輩、すごくエッチな顔してたなぁ。
いつか私も、あんな顔をするときが来るのだろうか。
先輩たちとキスをして、いずれは唇だけじゃなくて体を重ねて……。
「にへへ……じゅるり」
エッチな妄想に頬が緩み、下品な笑みとよだれがこぼれる。
ハッとなって表情を引き締めたものの、時すでに遅し。
先輩たちがイジワルそうな笑顔を浮かべ、洗いざらい吐けと言わんばかりに無言の圧力をかけてきた。
「後悔、しないでくださいよ」
私は腹を括り、妄想の内容を事細かに語る。
すべてを伝えた後、先輩たちの顔はハッキリ見て取れるほどに赤面していた。
薄々自覚していたけど、私の妄想は相当に過激な部類に入るらしい。
興奮して作業に身が入らないということで、バドミントンはこの後すぐ行われることになった。
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