第61話
冒険者としてのランクをあげるには、とにかく依頼をこなしていくしかない。
ここしばらくはFランクの依頼をこなしていった俺は、ようやくポイントが100に到達した。
一流の鍛冶師を目指すと決めた。
そのためには新しいものを作れるようになる必要がある。
基本の武器はできるが、素材を組み合わせる必要があるからな。
その素材を数多く集めるために、よりランクをあげたかった。
俺は現在、Eランク昇格依頼を受けるためにギルドへと来ていた。
「昇格依頼について、話を聞いたことはございますか?」
「いえ、初めてです。教えてもらってもいいですか?」
ギルドの受付にいった俺は、早速受付から昇格依頼についての話を聞くことになった。
昇格依頼とは、基本的には一人で受けることになっている依頼だ。
ただし、昇格依頼の難易度によってその限りではないというところだそうだ。
今回でいえば、ランクFからランクEに上がるための依頼になるのだが、今ある昇格依頼は複数で受けるものしかないそうだ。
昇格依頼は必ず今受けるというものでもない。
別に昇格せずに、ずっとランクFの依頼を受け続けることも可能だ。
ただ、それでは俺の目指すべき地点に到達できない。
とにかく今は、ランクCまではあげたいと思っていた。
「いかがしますか?」
今回受ける予定の依頼は、ラビットカンガルーという魔物だ。
参加人数は五名までとされている。
聞いたことはあるがどのような魔物かまではわからないが、ランクEの冒険者が当然のように狩る魔物だそうだ。
……たぶん、大丈夫だとはおもっている。
だが、油断はできないだろう。
「今、昇格依頼に参加している人数はわかりますか?」
「……三名ですね。あなたを含めて四名になります」
「その方々について聞くことは可能でしょうか?」
驚いたようにこちらを見てくる受付。
……失礼なことを聞いてしまっただろうか。
「すみません。教えられないのであれば大丈夫ですが――」
「もちろん、個人情報などは話せませんが、簡単に伝えることはできますよ」
「あっ、そうなんですか。驚かれていたので、非常識な質問をしてしまったのだと思いましたよ」
「いえ……そのランクでそこまで考えて行動する方がいませんでしたので。中々、用心深くよく考えられるお方なんですね」
「……びびりなだけな気もしますね」
そんな冗談をかわしながら、受付との話を進める。
「今回受ける冒険者三名――三名とも、これまでに多くの討伐依頼をこなしています。依頼達成率も100%ですので、ご自身の実力と依頼の難易度を考えて行動できる方たちだと思いますね」
「……そうですか。三人でパーティーを組んでいるというわけではありませんか?」
三人で受けようとしていたら邪魔をしてしまうかもしれない。
「二名はパーティーを組んでいるようですが、一名は別の上位ランクの方と行動していましたね」
「……なるほど。攻撃スタイルはどのようなものになっていますかね? 自分が近、中距離で戦うんですが被ってはいませんかね?」
「それでしたら問題ありませんね。二名が近距離で、一名が遠距離になります」
パーティーバランス的に……まあ、問題はないだろう。
あと一人追加で入ってきた人が遠距離なら、俺は普段通りに戦えばいいだろう。
もしも、後一人が近接なら、どちらかといえば補助に回ればいい。
「……了解しました。依頼の方受けさせてください」
「わかりました。では、手続きを行いますね」
受付が依頼書を用意する。俺はギルドカードを提示し、しばらく待っていた。
「はい、こちらで依頼の受領は完了しました。依頼自体は、二日後になりますね」
「了解しました。他の依頼を受けることは可能ですか?」
「はい。普段通りに依頼を受けてもらって構いませんよ」
それからゴブリンマジシャンの討伐依頼を受けてから、俺はギルドを後にした。
一度宿に戻り、ヴァルを回収する。
そういえば、受付の話では魔物などを連れていくことは認められていないんだったか。
ヴァルの援護は期待できないな。
ヴァルとともに街の外へと向かい、ゴブリンマジシャンを探していく。
「ヴァル―?」
何してるの? とヴァルが俺のほうに近づいてくる。
「ああ。……今度昇格依頼を受けるからな、武器の調整をしていたんだ」
問題は俺の戦闘スタイルだ。
周りに合わせ、なるべく不自然のないものに調整する必要がある。
解体に関しては、神器を使うわけにはいかない。やるとしても、こっそりとだ。
自動帰還に関しては、一つまでは神器として誤魔化せる。
身体強化系スキルは……まあ、いくつ持っていても大丈夫だろう。
過剰に力を発揮しなければいいだけだ。
毒攻撃ももっていてもいいと思うが、万が一仲間に当たったら危険だよな……。
乱戦になったら投擲系の武器は使いにくいな。
ハンドガンはもちろん使用禁止だよな。誰も持っていないんだし。
……アイテムボックスも活用できないので、事前にポーチを用意する。
ただ、これに関しては楽だ。ポーチに手を突っ込み、そこでポーションを作って取り出せばいいからな。
アイテムの使用に関しては、そこまで制限されないだろう。
ただ、ポーチに手を突っ込んでから使う、という普段より少し動作に支障が出るだけだ。
ヒールアタックをどうするか。そこだけは少し悩みどころだ。
もしもの時のために、一つ用意しておいてもいいだろうか?
ウェポンブレイクは……うまく武器のスキルとして誤魔化せるようにしておこうか。
装備のいくつかを透明化させ、それにウェポンブレイクを付与すれば見えない爆弾の完成だ。
それをいくつか身に着けておけばいいだろう。
実験を行いながら、ゴブリンマジシャンとの戦闘を行っていく。
ゴブリンマジシャンとの戦闘を繰り返し、投げナイフを投擲する。
……投げナイフを用いた戦闘、か。
俺はそこで少し考える。
解体用ナイフと違い、投げナイフは武器として扱われるのか、市場では出回っていない。
ちょっとだけ、宣伝用に活躍させてあげたいものだ。
うまく行けば、他の冒険者たちが欲しがるかもしれない。
そうすれば、鍛冶師としての出番だな。
ゴブリンマジシャンは通常のゴブリンとともに行動しているが、少し賢い。
ゴブリンたちのリーダーを務めるようで、後方から指示を出してくる。
ゴブリン三体がこちらに突っ込んできて、ヴァルがブレスを吐いて蹴散らす。
中距離にいたゴブリンマジシャンが杖を振り上げるようにしながら、魔法の準備を行う。
そこに、ナイフを投げる。
まっすぐに飛んだナイフが、ゴブリンマジシャンの腕に突き刺さる。
これで中距離を一気につめられる。
腕に刺さったナイフにゴブリンマジシャンは気を取られたようだ。
その間に飛びかかり剣を振り下ろした。
抵抗なくその首を斬り落とした。
切れ味抜群だ。
後方を見る。ゴブリンたちをヴァルが尻尾で吹き飛ばし、ブレスで仕留めている。
逃げようとした一体の足にナイフを投げつける。
転んだゴブリンへと剣を突き刺した。
……よし、問題なく戦闘が終わったな。
俺は軽く息を吐いてから、残りのゴブリンマジシャン討伐へと向かった。
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