第1183話 叛意を示して


 まずは何が起きたかを説明しよう。


 俺が案内人の背後を取った次の瞬間、案内人は俺に対して行動不能の奇跡を発動したのだ。それにより、俺は全く動くことができなくなったのだが、俺も同じように案内人を行動不能の状態に陥れた。


 そう、俺が用意した奇跡は相手が最後に使用した奇跡をそっくりそのまま使える、というものなのだ。


 もちろん、これは強すぎるから色々と条件を盛り込んである。相手が使ってから一秒以内に使う。だとか、相手の使用時間よりも長く発動することはできない。とか、使用する度に自分のHPの半分を消費する。とか。


 かなりの制限を加えてそれでも少しポイントが足りなかったから教団に立って信者に俺のことを拝ませてからここに来たのだ。


 だが、この奇跡はどうやらドンピシャだったようだ。


 敵の奇跡を同じようにこちらも使えるということは、ある意味敵の奇跡を無効化できるというわけであり、敵の奇跡を無効化することができたのならば、後はもうフィジカル勝負にしかなり得ない。そしてフィジカル勝負は……さっきの死にまくったおかげで相当バフがかかってる。


 正直奇跡を使う相手にはこれだけで完封できるのでは無いだろうか、というくらいの会心の出来だと思っている。


「ほう、それは面白い奇跡ですね。こちらとしても迂闊には奇跡をしようできませんね。ただ、私たちは奇跡によってのみ戦うわけではないです。この肉体もまた一つの奇跡として」


 ボゴッ


 あ、やべ。なんか絶対に人体から鳴っちゃいけないような音を出してしまった気がする。ただ、肉体が奇跡って言うんだったら、俺の肉体も認めてくれていいよな?


 ってか案内人って結局神様と人間ってどっちだっけ?


 ❇︎


「先ほどは大変失礼しました。改めまして自己紹介させていただきます。私はユグドラシル案内人のホロウと申します。以後、お見知り置きを」


 俺が戦いに勝利すると、まるで人が変わったかのような態度で俺にそう言ってきた。いや、多分元々こっちの性格がベースで、俺が喧嘩を挑んだからあんな生意気な性格になっちゃったんだろうな。だから、喧嘩両成敗ってわけだな。


「ありがとう、俺はライトだよろしく。今回の目的としては別に俺自身の世界を創りたいわけでは無いから、ここにいる神様を全員倒したいと思っているんだが……オススメの神様っていらっしゃいますか?」


「ほっほっほ! これはこれは、私に貴方を差し向けるのに丁度いい神様を選べと言うわけですな?」


「いや、そう言うわけじゃ……」


 いや、完全にそう言うわけか。


「よろしいでしょう。貴方は私を下し、ここは強さこそが全ての基準となる世界です。ですので、基本的には貴方の命には従います。ただし、私が貴方よりも強い神様に貴方と相反する命を下された場合にはその限りではないと心得てください」


 ふーん、あくまで強い奴に従うってことだな。


「ん、ってことは今から紹介される神様はホロウからして、俺よりも弱そうな奴ってことか?」


「それは少し語弊がありますね。勝負の世界においては勝った方が強者となり、負けた方が弱者です。ですので、戦ってみるまでその結果は誰にも分かりません。ただ一つはっきりしているのは神様が重ねてきた年月です。長い間ここに住まわれている方というのは、それだけの強さを兼ね備えているということです」


 まあ、確かにそうだな。弱い奴はすぐに倒されるか、誰かの下に降りそうだしな。


「ですので、今回私が紹介するのは、貴方のように比較的最近誕生された神様でございます。今から直接向かわれますか?」


「あぁ、そのつもりだ」


「では私がポータルを用意しましょう。その世界の名はフェイルブルへイム、後はご自身の目でお確かめください。では、また」


 その言葉と共に俺の視界は白一色になり、次の瞬間には別の世界が広がっていた。


「ん、何だここは?」


 そこには現実世界と見紛うほどの世界が広がっていた。










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遂にユグドラシル編が本格的に始まってしまった。

ここから秒読み……というわけでは無いのですが、確実に終わりが近づいてきてますね〜


さて、あと何話くらいで終わると思いますか?

私にも分かりませんが()

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