第1134話 奇しく行き詰まる


 奇跡、かー。まさか奇跡についてこんなに真剣に考える日が来るなんてな。


 基本的に現実世界じゃ、奇跡ってのは頑張った先に訪れるものか、偶然発生するものっていう印象だから、自分で起こすってのは想像できない。


 まあ、悩んでてもしょうがないから一つずつ試してみるか。


『なあ、メガネくん。今プレイヤーの中でアツい狩場みたいなトコってある?』


『狩場、ですか。少々お待ちください。ある程度のレベルに達したプレイヤーに限定すると……王都から少し離れた洞窟が人気みたいです。マップを送りましょうか?』


『あぁ、頼む。ありがとう』


 やっぱりメガネくんって優秀だよな。俺が人気な狩場を聞いただけなのに、すぐに初心者を除外したり、王都周辺で探してくれたりと条件を設定して、提案してくれる。え、メガネくんって、君付けしてるけど実はめっちゃできるビジネスマンとかじゃないよね……?


 もしそうだったらそっちの方が奇跡なんですけど。


 俺はメガネくんの優秀ぶりに怯えながら洞窟へと急行した。まあ、餅は餅屋だよな。俺には俺のできることをしよう。


 というわけで一騎当千の活躍見せちゃいますか!


「【鏖禍嵐蔓オウカランマン!】


 ❇︎


「……」


 人はこれを奇跡と呼ぶのだろうか? 多分だけど呼ばないと思うな。奇跡というより災厄って感じだし。なんかごめん、って気持ちが生まれてしまった。


 その後も、メガネくんに人の多そうな場所を教えてもらっては殺戮の限りを繰り返したが、どうも奇跡とは無縁の行いのような気がした。だって俺がただ人を殺めているだけだもん、奇跡っていうか日常に近い。


 日常と奇跡はもっとも遠い位置に存在しているもんな。


 んーじゃあ一騎当千の活躍で奇跡を起こすのは無理だとして、次は治癒系か。確かに俺のイメージではないから意外とこれで達成できるかもしれない。ただ、それと同時に今し方失敗したからか、どうも無理なんじゃないか、という予感も芽生えてしまっていた。


 そしてその予感は的中した。


 姿を変え、道行く人をどれだけ治癒しても、死の淵から救っても一向に奇跡を起こせそう、という実感はなかった。確かにもうこの世界ではあらゆる治療法が確立しちゃってるから、俺に治されなくてもいいもんな。ってか、俺はただ怪しいだけだ。


 んー、ってなると俺だけができること、もキーになるのか??


 分からん。とりあえず、天地創造も無理だとは思うが何かしらやってみるだけやってみよう。


 ッドッガーーーーン!!!


 手頃な山を見つけて、その山を擬似的に噴火させてみたんだが……これははっきり分かる。奇跡なんかじゃないと。ってか、天地創造ってこの世界においてはゲームを作ることと同義な気がするし、俺ができることじゃない気がする。


 んー、完全に行き詰まってしまった。くそ、抜くしかないのか、俺の伝家の宝刀を……!!


『メガネくんーーー!』










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充実した休日を過ごせると嬉しいですよね!(≧▽≦)

今日はカツカレーを食べたくて、カツを自分で揚げてカレーをインスタントで食しました。

え、何か??

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