第1073話 妖の筒
妖の館における主要な妖たちを粗方メガネくんの配下にした後、俺たちはその館のマスターに最後の三妖について尋ねてみた。しかし、日々妖たちと接しているマスターでさえ特に情報は持っていない様だった。
どうやら天狐よりも用心深い性格のようだ。ここまで徹底して情報を漏らさないということは何かあるのだろうか? 知られてはいけない何かが。
何の成果も上げられぬまま、いや、妖を沢山従えられたのはラッキーだったな。まあ情報は手に入れられなかったが、妖は手に入れることができた俺たちはまだ見ぬ情報を求めて、館を後にした。
いや、しようとした時だった。
「お、いたいた。頂上決定戦一位のお出ましだぜ? 本当にコイツがあのペリルを倒したのか?」
「まあ、向こうでの力が全く使えない訳では無いですからね。それに、ペリルさんはグリューグルに続く三番手ですからね。私たちとはまた違います」
「へっ、まあそうだな」
男二人組が館の前で大きな声を発しながら会話していた。んー、ゲーム内だと開けた気持ちになるのだろうか。そんなプライバシー筒抜けな会話してたら一言一句丸聞こえだぞ。って、ん、頂上決定戦一位って俺のことじゃね?
「さて、お手並み拝見といきますか。【妖術:識見】って、え? 妖力ゼロ? 配下もゼロ!?」
背の高い方が俺の顔を見ながら大きな声でそう言った。だから全部聞こえてるって。
ってかそれ俺の情報じゃん、俺のプライバシーの方が筒抜けじゃん。
「おいおいマジかよ? 最近コッチに来たとは聞いていたが、その間何もして無かったってことか? でも、相手が妖術使ってこない辺りガチっぽいな。ま、俺らにゃ関係のないことか。【妖術:縛縄】!」
二人組の背の小さい方がそう言うと、俺に向かっていくつもの縄が飛んできた。
俺は慌てて全知全眼を発動し、その縄を避けた。しかし、その縄は避けても避けても俺の捕縛しようと襲いかかってきた。まるで縄自体に意思があるかのように。
「おー、アッチの世界一位も伊達じゃないみてーだな。でもよ、この世界ではこの世界のルールが絶対だ。いくら最強でもそれからは逃れられない」
なるほど。だから俺が避けても避けても只管に追い続けてくるのか。もうその妖術を発動させた時点で俺が捕まるという事実は確定していて、妖術以外でそれに対抗する手段はない。
つまり、俺は詰んでいると言うことだ。俺だけだったらな。
「気をつけてください! いつの間にか連れの方が消えていますよ!」
「は? 最強はコイツなんだろ? ならコイツを捕らえたら終わりだ……」
「【妖術:神通力】」
メガネくんの言葉によって、二人の敵と俺を追い続けていた縄がピタリと静止した。そして、縄が霧散した。
そう、俺だけじゃ勝てなくても俺には味方がいるんでな。
「なっ、神通力って、それ、マ!? チートじゃ……」
「これは私たちが完全に敵を見誤っていましたね……」
バタッっと、二人は息を揃えたかのように気絶した。ふう、それにしてもこの世界では突然の来客が多いな。退屈しないのはいいんだが、今回みたいな時は後始末もセットだからなー。
あれ、次で何度目の拷問になるんだっけ?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ちょっと個人的に安定していない日々が続いております。原因はおそらくシンプルに暑いんだと思います。ハムスターは気候の変化に非常に弱いのです(多分)
あと少ししたら慣れて、生活も落ち着いてくると思うので今しばらくお待ちくださいませ♪
因みに、サブタイトルのルビはゴーストシリンダーです()
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます