第1041話 追われてる自覚ない人

本日はこそっと前話を投稿しておりますので、まだお読みで無い方はそちらからお読み下さいませ。

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 なんとかなんとかの領地内にあるダンジョンに入ると、そこは今まで俺が経験してきたどんなダンジョンとも違う、全く知らない世界が広がっていた。


 なんと、そこにはだだっ広い大きな一部屋があり、その中に無数の妖が放し飼いにされていたのだ。これはダンジョンというより、もはやただの牧場だろう。


「こ、これは酷いですね。プレイヤーたちに対しても酷いですが、ここに閉じ込められている妖たちも可哀想です」


 座敷童を従えてからというもの、どうやらメガネくんは人間よりも妖に対して感情移入を強くしているように思う。まあ、元々人間ではなく魔物サイドについてたのだから当然なのかもしれないが、別に妖も味方ではない。


 むしろ俺は監視されているくらいなのだから、いつか妖が敵になった時、メガネくんはどうするのだろうか。


 そういえばダンジョンに入ってからというもの、監視の目が感じられないな。ダンジョンは治外法権なのか? それともこのダンジョンは既に……


「あ、一体の妖がこちらに近づいて来ますよ!」


 メガネくんの声によって俺の意識は上層へと引き上げられた。


「ど、どう致しましょう?」


「どうするも何も、捕まえる気がないなら倒すか逃げるかの二択しかないんじゃないか?」


 捕まえるにしろ服従か懐柔の二択しかないけどな。


 こちらに迫ってきた妖はツノの生えた牛のような頭に人間の体、足は幽霊みたいに存在しなかった。これはなんともキメラチックな妖が出て来たもんだな。


「メガネくん、どうする?」


「……え、え、えーっと」


 メガネくんにはやはり圧倒的に実践経験が足りていないな。一瞬の判断の遅れが命取りになることをしっかり理解してもらわないとだな。


 まあ、俺は俺で思考加速スキルとか使ってるから、ズルイとか言われちゃうかもだけど。


「メガネくん。今すぐにとは言わないが、これから戦場に立ち続けたいのならば迷うな。ここは迷う場所じゃなくて戦う場所だ。あと二秒で決断ができなければ俺が倒す。どうする?」


「えっ……倒します!」


「よし、分かった。じゃあファイト!」


 メガネくんは妖に少し愛着を持ってしまってたからな。それもあって逡巡していたのだろう。だが今回の荒療治で戦場での決断スピードと、妖に対する向き合い方を同時に教えることができた。ん、俺って天才なのでは?


 ま、俺に言われてすぐにその意図を察するメガネくんの方がよっぽど凄いんだが。


「【無彩魔法】、ワールドエンドホール!」


 ん、ちょっと待てなんだその魔法は。そんな物騒なものまで使えるのかそれ? 黒い球体を生み出したと思ったらそれに妖が触れた瞬間に消し飛んだぞ? ジ・イクリプスといい本当にやばいなその魔法。


「ふぅ、ご助言いただきありがとうございました。陛下がいなければおそらく何もできなかったと思います」


「いいんだ。一つずつ成長していけばいいんだ」


「はい! ん、なんでしょうこれ、妖、力……?」


 妖力??

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