第1040話 溜まる圧力

妖の館のマスター視点でございます。

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「マスターご報告があります」


「入れ」


 ふぅ、やっと一回目の報告か。思ったよりも遅かったな。何事もなかったのだろうか。やはり、受付の言葉に過剰に反応しすぎただけか?


「先ずは謝罪をさせてください。私たち監視暗部が一人、『東』がやられてしまいました」


「何っ!? それは真か? 監視対象にやられたのか!」


 監視暗部とは妖の館のマスターであるこの私が秘密裏に構成している組織で、この妖の世界に対する危機の監視を目的としているものだ。もちろん、私までは及ばないものの、かなりの精鋭を揃えている。まさかそれがやられるとは、嫌な予感は的中していたようだ。


「いえ、それが……」


「ん、どうした」


「それが、実際に監視対象が何かをしたわけではない、のです」


「はぁ、何を言っているんだお前は」


「詳しく説明いたします。私たちは四方向から隈なく対象を監視しておりました。一挙一動を見逃していない自信もあります。その間、対象は何一つ怪しい素振りを見せなかったのですが、突如として対象と私たちを含む広範囲に霧が発生しました」


「霧?」


「はい。そしてその霧が晴れる頃には……」


「もうやられていた、というわけか。その霧が発生している中でも残りの三人は監視していたのだろう? その間はどうだったんだ?」


「もちろん続けておりましたが、特に怪しい点はございませんでした」


「そうか……」


 状況から推測するに、確実に怪しいのは監視対象だが、現行犯は確認できていないということか。これは非常に難儀なことになったな。


「その霧が発生した時に、対象は動揺していたか? 自身が生み出したものでないなら、多少なりとも反応を見せると思うのだが」


「はっ! 確かにそうですね。驚いた様子もなかったように思えます。ということは」


「あぁ、対象が引き起こしたとしてみてまず間違い無いだろう」


 だが、どうやって我が暗部の居場所を探り、そして倒したのか、一切の検討がつかないな。人間ということもあり、我々の知らない力もたくさん持っていることだろう。これは更に厳戒な態勢を敷かなければ……


「マスター更にご報告がございます」


「更に、だと?」


「はい。その監視対象が人間が統治している集落へ差し掛かったのですが、そこでは関所のようなものがあり、通行料を払うよう言われました。通行料はお金、もしくは妖です」


「チッ、あいつらか。相変わらずゲスだな」


「はい。そこで対象の実力が測れると踏んでいたのですが、そこでなんと対象は骨の妖を生み出し差し出してしまいました。それも二体」


「何!? 妖を生み出した、だと?」


「はい。対象が妖を従えるところは確認されておりませんし、対象が生み出した妖もここら辺では見かけないものでした。ここに来る前に調達していた、という可能性はありますが……」


「そうだな、妖を生み出せると想定していた方がいいだろう」


 これは私が想定していた状況よりも遥かに恐ろしいようだ。私の一存だけでは今後の方針は決めかねるな。


「残りの奴らは今どうしている?」


「は、『南』『西』は引き続き監視を、『東』は治療に当たっております」


「分かった。このまま監視を続けてくれ、何かあったらお前が報告し必ず誰かが監視しておくように。私は上に掛け合ってみる」


「承知いたしました」


 上の反応次第では、大事になるぞこれは。

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