第1039話 男と男と男
三人称視点となります。ご注意ください。
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「グリューグル様! 本日の上納分になります!」
「ご苦労。さて、問題はこの俺様に相応しい妖がいるかどうか、だが……これは」
男が妖を見定めていると、ふと、二組の妖が気になったようだ。それは、骨の妖怪で一見強そうには見えない妖であった。
「その、骨の妖がどうかされましたか?」
「ふっ、貴様らには分からぬのだろうな。この見た目に惑わされこの骨から感じられる圧倒的なまでの妖力を見抜けぬようではまだまだ半人前だ。恐らく、この妖を従えた者が相当なやり手なのだろう。これは是非とも我が組に引き入れなければだな。まずは、この妖を連れてきた奴を呼べ」
「はっ、かしこまりました」
そして、数分と経たないうちに一人の男が連れてこられた。本人は何故自分が呼ばれたのか、分かっていないようだった。
「この骨の妖はお前が持ってきたものか?」
「え、は、はい……」
「ではどんなプレイヤーからどこでこれを貰った?」
男は連れてこられて早々質問攻めにあったため、ひどく混乱したが、ここで取り乱すことの方が大変な事態になることをわかっていたため、努めて平静を装い答えた。
「それは、この領地の東側に設けられている関所で徴収したものであります。確か、二人組でして、一人はメガネを掛けた男で、もう一人は……はて、どんな姿だったでしょうか、ともかくそのメガネを掛けていない方がこの骨を二体とも呼び出し私たちに差し出しました。それと、まだこの世界にきて間もないのか、グリューグル様を知らない様子でした」
「ほう……この領地にいるのか。好都合だな。大した情報では無かったが、もういい下がれ」
「はっ」
あってないような情報を提出され、本来なら激怒してもいいところを、今回はまだ見ぬ男への興味が勝ったようだ。連れてこられた男は酷く安心しているようだった。
「では組の者全員に伝えろ。男二人組を探せ、と。一人はメガネを掛けており、この領地内にいるというのだからすぐに見つかるだろう。至急、ここに連れて参れ」
「はっ」
「これから面白くなりそうだな。その男を手に入れることができれば、俺はこの世界を牛耳ることができるかもしれない、それほどの逸材だ。クックックック……」
男は醜悪な笑みを一人浮かべた。そしてその男に狙われている男というと、
「なあ、メガネくんなんでこんなところに来たんだ? 関所といい、領地の雰囲気といいなんか治安悪くねーか?」
そんなことなど梅雨知らず観光気分でほっつき歩いていた。
「すみません私のリサーチ不足でした。ここにはとても経験値効率の良いダンジョンがあるということで向かったのですが、それもこの様子だと眉唾ものですね。関所で巻き上げるために偽情報をばら撒いていた可能性すらあります……せっかく妖を出してくれたのにも関わらず本当に申し訳ありません」
「いいっていいって、あんなの妖でもなんでもないただのスケルトンだし」
「え!? そうなんですか? でも確かにこっちに来てからまだ陛下は捕まえていませんもんね」
「あぁ、何なら登録すらしてないしな。って、ここか? さっき言ってたダンジョンってのは」
「はい、どうやらそのようですね。一応ここまで来ましたから寄ってみますか?」
「あぁ、ダンジョンが目の前にあるのに行かない手はないだろう」
そう言って、まるで遠足気分でダンジョンへと潜っていった。
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