第1038話 関所と偽札


 メガネくんと座敷童の微笑ましい戯れを横目に俺らは当てもなく情報がないか妖の隔世を歩いていると、


「止まれ」


 と声をかけられ、静止させられた。気づけばどうやら俺たちは関所の様な場所まで来てしまっていたのだ。


 妖の使いか? と思ったが、よく見ると俺らを静止してきた者はプレイヤーだった。その人物は細くなっている道を塞ぐように立っており、その奥にも十人ほどプレイヤーがいた。これは中々穏やかじゃないな。俺が敵を見定めていると、向こうから口を開いた。


「ここを通るには通行料、もしくは妖一体を払う必要がある。お前達はどちらにする? もちろん一人ずつだぞ」


 と、そんなことをほざき始めた。


 普段だったらここにきた時の様にコイツらをボコボコにして通るんだが、生憎俺は監視されている立場だ。下手なことをして目立つわけにはいかない。ここは穏便な手段で……


「お言葉ですが、貴方達は誰の許可を取ってこの様なことをしているんですか? そもそも私たちはこんなことに応じる義務はありません!」


 そんなことを考えていると、メガネくんが毅然とした態度でそう言ってのけた。


 うん。……うん、君は正しい。正しいけど、そうだな、この状態の正解ではないな。


 座敷童の手前カッコ悪い姿を見せたくなかったのだろうか。それとも俺がいるから気が大きくなっているのだろうか。はたまた、単に正義を実行しただけか。


 メガネくんの場合は普通に三つ目もあり得そうだから、なんとも言えないが。


「ほう、誰の許可を取っているか、か。面白いことを聞くじゃねーか。ここから先はグリューグル様の領地だ。そう言えば分かるか?」


「……っ!?」


 ん、ちょっと待てちょっと待てメガネくん。一人で驚かずに俺にもその意味をれ教えてくれ。俺は何も分かってないんだけど。


「グリューグルって、この妖の隔世で幅を利かせているプレイヤーの一人で圧倒的な量の妖を支配下に置いていると言われている、あのグリューグルですか!?」


 お、ナイス説明。


「そうだ。大人しく払う気になったか? もし金が嫌なら妖でもいいぞ? どんな妖でも引き取ってやるよ。あ、因みに通行料は五万な」


「「五万!?」」


 これには流石の俺も驚かされた。だって五万って今時高速道路を利用するのにもそんな取られないぞ? なんなら飛行機でかなり遠くまで行ける金額だ。


「そ、そんな法外な金額払いませんよ! じゃあもう通りません!」


 メガネくんが抵抗する。だが、


「おいおい今更それはねーぜ? それに帰るとしてもここに来た以上、金か妖を寄越さなければ実力行使になるぜ?」


 男はそう言ってメガネくんに詰め寄った。メガネくんは俺の方をチラッと見たが、どうやらここは自分でなんとかしたいらしい。


 確かに俺が強化してやった今ならコイツらとも戦えるかもだが、相手は十人以上いる。戦闘に慣れていないメガネくんは少し分が悪い。ここは俺が……


「分かった。じゃあ妖をやるよ。ここでどんぱち起こすのはお互い望んでないことなんだろう?」


「おう、お前は聞き分けがいいんだな」


「まあな。じゃあ二人分でいいか?」


 そう言って俺は心の中で死骸魔術、召喚と唱えた。


「ほら、骨の妖だ。これで満足か?」


「あぁ。確かに受け取った。入っていいぞ」


「へい……よ、よろしいんですか??」


「あぁ、大丈夫だ。それより先に急ぐぞ」












━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

違和感を感じた方、以下のリンクからその謎が解けるかもしれません。


隔世なのになんで召喚できたのか知りたい方はこちらからどうぞ!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054896389186/episodes/16817139554669862857

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る