第1021話 神理論


「で、では直球で質問させていただきます。何故、ライト様はあれだけ死に続けていらっしゃるのですか?」


「……」


 マジでド直球で来たな。ってことはやっぱりこの人たちは多かれ少なかれ俺の日頃の素行を見ていると言うわけだな。そして、何故そんなことをしているのか、と言う疑問を抱いてここにやってきたと言うわけか。


 正直な所、別に一から十まで説明しても良いのだが、それだと俺が自殺を考えていたこと、そしてその理由までを教えなければならなくなる。流石にそれは嫌だし恥ずかしい。


 だが、ゲーム内で自発的に死ぬ、なんて奇行を取っている以上、その理由はどうしても痛くならざるを得ない。これに関しては必要経費として割り切り他ないか。


「本当は死ぬことが目的ではなく、痛みに慣れたくて始めたことなんです。単純にほら、男なら痛みに強いってだけで憧れる生き物でしょう? 恥ずかしながらそういう理由なんです……」


 俺は厨二病のフリをした。そうすることによって恥ずかしいことを吐露したことになる。つまり本音を引き出せたと相手は思うはずだ。そして、恥ずかしいことを聞いてしまったという引け目を相手に感じさせることもでき、これ以上の追求も避けられるはずだ。


「なるほど! そう言う理由だったんですね! そこからの延長線上で死にまくって色んなことへのスキル的な耐性だけでなく、精神的な耐性を身につけていったと言うことですか!」


 え、なんかこのインタビュアーめっちゃテンション上がってるんですけど。もしかしてこの人も厨二病患者なのか?


「では続きまして、これからの展望についてご質問させて頂きたいと思います。ライト様は現在魔王としてプレイヤーの第一戦でご活躍なされていると思うのですが、今後どのようなことをしていきたい、みたいなことはありますでしょうか?」


 うわ、いきなりザックリとした質問が飛んできたな。今までのがルーツを聞くので次は展望かー。別に大したこと考えてないんだよなー。そもそも俺が流されてここまで来たわけだし、あ、でも一つはあるか。


「神様になりたいですね、と言うか目下なろうとしております」


「神様……またそれは何故? 魔王はもう十分神様みたいなものじゃないんですか?」


 まあ、確かにこれが普通の反応だよな。まあ、魔王の神化計画もガチの成り行きなんだが、最近ある目的を見出し始めているのだ。それは、


「今まで、私はこの力というものに重点を置いてきました。自分自身にしろ従魔にしろ量よりも質を意識してきたと思っております。しかし、戦いの中では必ずしも質を上げれば勝てる、というわけではないと思い始めました。ですので、神になることでより人を集められるようになればと思っております」


「ほうほう、なるほどなるほど。しかし、もう既に十分力をお持ちなのでは? それこそどれだけ敵に数の利をとられたところで魔王が負ける未来が見えないのですが……」


 ほえー意外にも俺をそんなに評価してくれているんだな。それは有難い。だが、それではダメなんだ。


「今は負ける未来が見えなくても、敵も人間ですからいずれ追いつかれると思っています。それに、現時点でも全プレイヤーを敵に回したら負ける可能性は十分にあります。私の体は一つなのに対して、幾つもの体に無限ゾンビアタックを敢行されれば流石にどうしようもないでしょう」


「なるほど、そういった理由で目には目を、じゃないですけどプレイヤーの戦力も保持しておきたいということですね!」


「はい」


 ま、そもそも全プレイヤーを敵に回そうなどと考えている訳では毛頭ないのだがな。


「では、全プレイヤーが敵に回るような、そんなイベントをご用意させてもらってもよろしいですか?」


 ……ん、ん?? なんでそうなった?

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