第978話 巻き込んだ人


 俺は今、教会に来ていた。今まで俺は神殿だの教会だの聖堂だのよく分かっていなかったのだが、調べると明確に違うってことが分かった。何が違うのかについては未だによく分かっていないのだが。


 そして、称号を消すためには教会に来る必要があるらしい。そんなわけで、


「ごめんくださーい」


 教会の扉を開けた。格好は身バレを防ぐためにちゃんと初心者装備をしている。あと、魔王の皮を被らずに人と話すのが久しぶりすぎて少し緊張している。元々俺はコミュ障よりの人間だから、仕方ないのだが。


「ぷ、プレイヤー?」


 そう身構えていると、俺をみるなりそこにいた人が驚いた声を出していた。まさかの教会にいる人がプレイヤーだったのだ。教会にプレイヤーが来ることが珍しいのだろうか?


 ちょっと待て、相手がプレイヤーってことは生身の人間ってことだろ? 今までのNPCはまだコンピュータだからと割り切れる気持ちがあったんだが、ガチモンの人間ってなる本当に話が変わってくるぞ? だからいつもはあまり意識しないようにしているのに……


「あっ、あなたもプレイヤーさんですか? ちょっと消したい称号がありまして、こちらで消せると伺ったもので、、、」


 無意識に俺の言葉に変な敬語が搭載される。自分でも違和感しかないがそもそも人と会話すること自体が久しぶりすぎるからもうどうしようもない。


「了解しました。消したい称号は幾つございますか? 一つにつき10000ゴールドかかりますが大丈夫でしょうか?」


「分かりました、では一つお願いします」


 思ったよりも安いんだな。もっとふんだくられるかと思っていたんだが良心的な価格設定のようだ。


「では、祭壇の方へと移動しますね、こちらへどうぞ」


 奥へと案内されるとそこには膝くらいの台があった。照明がいい感じに当たっていてまるでUFOにでも攫われていくかのようだ。


「ここに寝転んでください、」


 寝転ぶのか、まるで手術でもするみたいだな、そんなことを考えていると、


 バチッ!


「「え?」」


 ちょっと強めの静電気が起きた。俺は別にセーターを着ているわけでもないのに、しかもゲーム内なのに静電気が起きるなんて変だな。神官の方もちょっと動揺している。


「あ、あれー? おっかしいですね、もう一度やってみましょう」


 言われるがままもう一度寝転ぼうとすると、


 バチィッ!!


 さっきよりも強めの静電気が起きた。静電気って普通一回なったらその次はもうならないのが普通じゃないか? さっきよりも強い電撃が走っちゃってる。神官様も引いちゃってるじゃん。


 でもここまできて引くわけにはいかない。教会の神様にも舐められたらダメだからな。もしかして神様が俺に試練を与えてくれているのかもしれない。ま、電撃は全て無効化されるから大丈夫なんだけどな。


「もう一度お願いできますか?」


「は?」


 そういうと驚かれてしまった。そりゃそうだよな、普通こんなバチバチなってたら誰でも帰るよな。でも俺はどうしても称号が削除したいんだ。


「あ、いえそうですよね。でも、自分は大丈夫なので、我慢できますので気にせず称号の消去の方を行なっていただけないでしょうか?」


「は、はぁ……」


 ちゃんと大丈夫だという旨を伝えて今度は電撃を無視して台に寝転んだ。相変わらずバチバチ言っているが電気マッサージみたいで気持ち良い。


「消去したい称号を選んでください」


 お、称号の方も無事消せるみたいだ。俺は加害者という称号を選んで決定を押す。そして神官様の最後の仕上げが終わると、


ーーー称号《叛逆者》を獲得しました。


 神からのお告げが聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る