第939話 実体絶命
公爵悪魔の時から思っていたのだが、どうやら悪魔は階級が上がるとどんどん人間臭くなるらしい。ってことはだ、最も人間らしいと言える煽りも当然通用するわけだ。
「やーい、お前のかーちゃんでべそー」
「ん?」
あ、これは効かないのか。悪魔にはお母さんっていう概念がないのかな? ってか、そもそも悪魔はどうやって生まれてどうやって死んでいくのだろうか。寿命なんて存在しないのか?
でも寿命がない、つまり老化では死なない体であるならば、寿命ありの生物よりももっと生にしがみつきたくなりそうだな。もしそうなら公爵悪魔の死に対する恐怖も頷ける。でも、死ぬからこそ生きていたい、っていう考えもあるよな。よし、後で聞いてみるか。
「戦いの最中に考え事とは随分と舐められたものだなぁ!」
その時、俺は斬られた。
「え? 斬られた?」
「フハハハハ、無様な人間だな。自らが斬られたことにすら気付いていないとは。そのまま、死んだことすら気づかずに死ね!」
いや、そうじゃない。だって俺は斬られたことには気がついているのだから。そうじゃなくて、何故斬られたのか、ということだ。そもそも俺は斬られるはずが無い、何故なら物理攻撃無効を持っているからだ。それでも斬られたということは……
「物理攻撃では無いのか!?」
「ほう、人間のクセにそれに気がつくとは生意気だな。そうだ、この攻撃は物理世界に存在していない。つまりは貴様に防ぐことは不可能だということだ。その小さい頭で理解できたのならばさっさと死ね」
なるほど、悪魔はこの世には存在しなくて、親王は物理攻撃じゃない攻撃をできる。つまりは、コイツら
「うぉっと! 危な!」
戦闘中にうだうだ考えるのは無理そうだな。敵の攻撃は視えるが見えにくい。発生も速いし攻撃速度も非常に速いからかなりギリギリだ。いつもは思考加速でどうにでもなるのだが、それが効いていない気がするんだよな。
恐らくだが、相手にもそっち系のスキルを使われているような気がする。どうやら相手はマジで強いらしい。これなら公爵がビビり散らかしていたのも頷ける。
そしていつもならここで自分の身を差し出して、物理攻撃じゃ無い攻撃、精神攻撃ともまた違うな、これは霊体攻撃とでも言うか、その攻撃の無効化スキルを得るのだが。
チラッと目を見やるとそこにはこの世の終わりを具現化した顔でこちらを見ている。そう、公爵の前では死ねないのだ。俺が死んだらまず間違いなく親王に殺されるだろうし、何よりあんだけ大口を叩いたのに一度でも死ぬのは嫌だ。
ってか、むしろそれが大きな理由だな。ん、ってことは俺が死んでアイツが殺されれば別にどうでも良くなるのでは? まあ、流石に可哀想だからやめとくか。でも、
「【爆虐魔法】、ツァーリボム」
「ふっ、なんだその攻撃は。おちょくっているつもりなのか? 貴様では我を倒すことは不可能だ。さっさと諦めて死ぬが良い」
そう、攻撃が効かないのだ。俺の最高火力と言っても遜色ないツァーリボムを無傷に抑えられるのは流石に想定外すぎる。恐らく俺も霊体攻撃を会得しなければならないのだろうが、そんなスキル今まで見たことも聞いたこともない。
ん、今まで見たことも聞いたこともない? それなら、作れば良いじゃないか。なんだ、簡単な話だったな。
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