第914話 国作りマニュアル〜魔王編〜


 土地の獲得は思ったよりも簡単だった。


 城の周りの土地が、まだ誰のものでも無かったこと、そして、そんなに強い敵がいなかったことで楽にゲットできたのだ。


 土地の獲得方法は、モンスターを狩り終えた場所に柵を打つという、こちらも非常にシンプルなものだった。


 でも柵の持ち合わせが無かったから、急遽アシュラに協力してもらって骨を提供してもらった。


 柵を打つと言っても綺麗な柵を打つ訳ではなく、一本打つごとにその周辺の土地を獲得できる、みたいな仕様だった。


 領地に沿って綺麗に柵を打つのはしんど過ぎるし、日が暮れるからな。


 グサッ


 俺は逐一獲得したエリアを確認しながら骨を刺していく。色々試してみた結果、どうやら自分の獲得した土地の内側もくれるみたいだ。確かにそうじゃなきゃドーナツ型の領地になってしまうからな。


 ん、ってことは、


「【光速】!」


 俺は城が円の中心になるように全力ダッシュをした。光速は直線距離しか走れないという弱点があるが、それを逆に利用して、方向転換する度に骨を打ち続けていった。


 そして、俺がスタートした地点に戻ってくると、、、


「おぉー」


 かなりの範囲が俺の土地になっていた。これが俺の国、これが俺の不労所得!


 ま、いくら稼いだ所で現実には持って帰れないんだけどな。


 ……よし、リアルのことは考えるのを辞めて次のフェーズに進もう。土地を獲得した後は、どうやら家を造る必要があるらしい。


 家、か。柵を打っている時からなんとなく思ってたんだが、この国家建設クエスト? 絶対に一人でやるもんじゃねーだろ。


 みんなでワイワイいいながら楽しく策を打って、専門の職業の人とかを交えてみんなで作っていくもんだろ? なんで俺は一人でやってるんだ? 


 もうこうなったらやるしかねーな。


『全員集合っ!!! お前ら、今から家を造るぞ! まず、ゼイン! お前は自慢の炎で大地を焦がすんだ! 魔王には不毛の大地が似合うからな!』


 それに地面灼熱の炎で熱したら水分が蒸発してなんか硬くなりそうだろ? 家を造る上でキチンとした地盤は必要だからな。


『そして地盤が固まったら次は、アシュラとアスカトルで骨と糸を使ってテントの様な家を、ペレと海馬でマグマを固めて洞窟みたいな家を作りまくれ!』


 いよいよ家の建築に取り掛かる。まさかモンスターが蔓延る魔王国に3LDKなんて大層なら間取りを望んではないだろうな?


 魔物は黙って洞窟で寝とけばいいのさ。魔族用に骨と糸のテントも用意してるから万全の体制だろう。


『ハーゲンは上からバランスを見て、皆に作る場所の指示を出してくれ! スカルとボーンは家造りのサポートで、全体的なバランスを見て、問題があったら報告してくれ』


 うむ、上司というのはこうやって配下達に仕事をテキパキと割り振るもんだよな! 俺はできる上司なのかもしれない。


『デトは適当にそこら中に毒沼を作ってくれ。魔王の国に毒沼がないのは考えられないからな』


 うんうん、いい感じだな。後はアイスとゾムか……


『よし、二人は俺と一緒に遊ぶぞー!』


 俺はその後、家が粗方出来るまで二人を愛で続けたのだった。

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