第840話 和布と馬糞
「はぁー」
俺は抗争を終えて一人落ち込んでいた。その理由は言わずもがな、先程の戦いにある。
いくらなんでも少しやり過ぎてしまった、と自分でも思わずにはいられない。なんせ他のプレイヤーからしたらタダでさえドラゴンだけでも注目に値する訳だし、ましてやそのドラゴンがミサイルを口から発射してたら警戒しかしないだろう。
ま、ま、まあ百歩譲って他のプレイヤーからの目線や警戒は最悪受け入れよう、俺の不注意でもあるしなんとなく暴れ散らかしたい気分だったのも間違いないからだ。
しかし、しかしだ、問題はそれだけじゃないのだ。というかそれは些細な事と言ってもいいくらいだ。問題はメンバー、そうフンコロガシの皆んなの視線だ。皆はこの分かりやすい事件というか事故だけじゃなくてその前の抗争での俺の様子を知っているのだ。その他大勢のプレイヤーと思っていることがまるっきり変わるのは当然のことだろう。
だって前回の戦いではいの一番に爆死したくせに今度の抗争では、彼らを砦に押し留めて、自分一人だけしゃしゃり出て終わらせてしまったのだ、皆からしたらつまらない以外の何物でもないのだ。多大なる反感を私は買っているのだろうなー。
うー、俺にだってもちろん言い分はあるぞ? いの一番に死んだからこそそれを取り返そうって思ったのは確かだ。でも、そんなの彼からしたらただの言い訳にしか聞こえないんだろうな。
「ぐぁー」
思わずゾムの鳴き声のような声が出るほど、俺は頭を抱えていた。
いや確かにそんな大事か、って思う人もいるかもしれないが俺にとっては大事だぞ? タダでさえ人間関係に自信がないコミュ障だっていうのに、何故かリーダーにまで成り上がってしまってもうわけわかめだ。
リーダーの強権を発動して黙らせるっていうのも一つの手かもしれないがそれだとますます反感を買うことだろうなー。
やっぱり人間関係は面倒くさいよなー。結局ソロが最高だし、同伴者はNPCに限る。このイベントが終わったら少しこのクランから距離をおこう。リーダーの役目は歯垢帝や山田さんに任せて俺は魔王に専念しよう。
人間関係ってのは人生をよくしてくれると同時に、悪くするものでもあるよなー。
俺はふとそんなことを思った。いや、別にフンコロガシのみんなのせいで人生が悪くなったなんて思ってはないぞ? 思ってないが、ただ、つくづく面倒臭いと思ってしまうのだ、周りの目を気にしてしまう自分が。他人の目線、無駄な駆け引き、そんなことに労力を割くくらいなら喜んで俺は一人になる。
一人が一番楽なのだ。それに人と関わらなくても仲間は作れるということを俺は知ってしまったしな。
というかそもそも俺がこのクランに入ったのもこの抗争をしてみたい、っていうのが発端だったし仮に抜けるとしてもなんの思い残しもない、はずだ。多少なりとも思い入れがあるのもまた間違いではない。
まあ、その為にもこの抗争を無事納得のいく形で終わらせる必要があるのだが……
「ふふぃー」
どうしても奇妙なため息が出てしまう。ん、ってか一から百まで完全に俺のせいなのに俺が一番被害者面してるって意味分かんないよな。よし切り替えよう。
俺がウジウジ悩むことこそメンバーからしたらウザイことだろう。さっさと次の試合も攻略しちゃいましょうかね!
❇︎
そうやって気合を入れた俺は次の試合も見事、皆と協力して勝ちを納めることができた。しかし、どこかいつもとは違う微妙な空気がクラン内に流れていたのを俺は見逃さなかった。
「ばふーん」
俺はまたしても奇妙なため息を零さずにはいられなかった。
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