第836話 懸念と高揚
ーーースキル【衝撃無効】
スキル【打撃無効】を獲得しました。
俺は幾度と転がった果てに二つのスキルを獲得した。もう転がりすぎていまだに頭がグワんグワんいっているのだが、そっちの耐性の方は貰えなかったようだ。
だが、こうして実際スキルを手に入れてみると少し変な感覚になるな。だって、封印されてはいるものの、確かに俺は物理攻撃無効をもっているんだ。そして、その中に衝撃無効と打撃無効も含まれている、はずなのだ。
もし、この状態で封印を解除したならば、この二つは物理攻撃無効に吸収されて終わりなのだろうか。もしそうであったら少し寂しいというか勿体ないな。せっかくの俺の死が少しでも無駄になるのはなんとなく嫌だ。
というわけで、俺は一度この二つのスキルを封印した後に、今まで封印していたスキルと称号を解放した。
最初、封印することに忌避感や不安感が無かった、と言えば嘘になるだろうが、今はもうすっかり着る服を変える、程度になっているな。
そうだ、もし時間があれば魔王の時に使うスキルと、プレイヤーとして使うスキル、というのを分けておけば万が一にもバレる危険性を減らせるかもしれない。スキルセットを組んでおくことで瞬時に交換可能ならばそんな手法もアリだな。
ま、時間があれば、だけどな。
どうやら今は時間が無いようだ。転がるのに時間を使いすぎてしまっていた。そろそろメンバーに顔を出さないと怪しまれるだろうし、水球ばかりじゃ飽きてしまうだろう。
因みに俺は、メンバーが死んでから火山に戻ってくる反対側でずっと転がっていたから恐らくバレていない、はず。ま、みられていたとしても転がっていたのだからまさか俺とは気づくまい。
ドスん、
俺は水球場がある火山の奥に降り立った。俺が姿を見せると、わらわらとメンバーが集まってきて、それぞれ皆が自分の成長した点を伝えてきた。正直、マグマに対する耐性だけだと思っていたからびっくりだ。
しかし一番驚いたのは、なんと言ってもあの回復役を任命した子だ。正直数が余ってしまったから、という最悪な理由で押し付けてしまった役職というのに、彼はしっかりと役目を果たしてくれていたようだ。その甲斐あってスキルも進化し、称号まで獲得していたのだ。
ほんの思いつきだったが、此処まできて仕舞えば本当に回復役としてクランの大黒柱になれるかもしれない。
少年よ、貴様がフンコロガシの柱となれ、ってか? フンコロガシだとどう足掻いても締まらないな。このフレーズは永遠に口に封じておこう。
さて、明日はクラン抗争の決勝リーグ開始の日だ。どんな強敵が待ち受けているのかは知らないが、良い感じにメンバーのやる気は最高潮に達しているし、ちゃんとそれぞれの強化もできた。
負ける道理も無いが、全力で勝ちに行かせてもらう。
魔王が本気を出すとかズルい、なんて言わせねーからな? だって俺はスキルと称号を全部封印して臨むんだからな。
メンバーがどれだけ強くなったのか気になると同時に、俺がどれだけ活躍できるのか、これも非常に楽しみだな。
あぁ、早くも明日のイベントが待ち遠しいぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます