第827話 予選終了


「っと」


 俺は魔王城地下一階、フンコロガシの拠点へと帰ってきた。そこでは皆が整列して待っていてくれて、俺のことに気がつくと、拍手をして出迎えてくれた。


「みんな、、、」


 皆を囮みたいに使ってすまなかった、そう言おうとする前に、歯垢帝が前に出てきて発言した。


「リーダー、流石でございます。私たちは信じておりましたよ。私たちを勝利に導いてくださり、ありがとうございます」


「え、あ、うん」


 歯垢帝、お前そんなキャラだったか? まあ、あの帝キャラも素じゃなくて作られたもの、であるなら、キャラの一つや二つ作るのなんて簡単なことなのか。


「そんなことよりもリーダー。今回の戦いでクラン抗争の予選が終わったようです。そして今までの予選の中で好成績を残したクランのみが次の決勝リーグに進出できるようです」


「へ、へぇー」


 そういうシステムだったっけ? このイベントが始まったのが随分と前だから忘れちゃったな。


「しかしリーダー。幸か不幸か、リーダーの大活躍によってこのクランも徐々に目立ってきております。今はまだそれほどではありませんが、この拠点がバレるのも時間の問題かと……いずれどこかに新しい拠点を作ったほうがいいかもしれません」


「なるほど、確かにそれはそうかも、な」


 皆は俺がこの城の持ち主だってことを知らないからな。それに、俺が魔王じゃなかったとしてもここに拠点があるのがバレたら不味そうな雰囲気がある。外聞が悪いって言うんだっけな?


「クランのホーム、本拠地の件はこのイベントが終わるまでには考えておきたいな。えーっと、山田さん、良さげな物件を探しておいていただけませんか? 金額に関しては……特に制限はつけませんので」


 俺がそう言った瞬間、メンバーのみんながザワっとした。もしかして山田さんに敬語を使ったのが不味かったのだろうか? まあ確かにリーダーだから皆に尊大な態度を取らないと示しがつかない、ってのはあるかもなー。


 でも俺の中で山田さんは年上って感じがどうしてもするし、できる大人感があってどうしても敬語を使っちゃうんだよな。


「はい、かしこまりました」


「じゃあ、こんな所かな。皆、予選お疲れ様でした。決勝リーグに進めるかどうかは分かんないが、もし行けたらそこでも頑張ろうな。と言うわけで俺はこれでお暇させてもら


「お待ちください!」


 さっさと帰って漫画でも読もうと思っていた矢先、ある声に呼び止められた。その声の主は一人の男だった。まあ、メンバー全員男なんだけどな。


「我々フンコロガシは予選で全勝しております。つまりは決勝リーグに進出する可能性は大いにあります。そして、その決勝リーグ開始はなんと三日後です。何が言いたいかというと、私たちに稽古をつけて欲しいのです!」


 その男はとても真剣な面持ちでそう言った。俺はその言葉の重要性を吟味してこう答えた。


「えーっとお名前は?」

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