第784話 露見と就任


「では、これにて第一回、フンコロガシ強者決定戦を終了する!」


 俺が薄いさんを真っ二つにすると、歯垢帝が大きな声でそういった。


 え、もしかしてこのクランの名前、フンコロガシっていうのか? え、マジで? どんな神経してたらそんな名前つけようって思うんだ? 


 ん、ということはフンコロガシっている名前の弱っちいクランの戦闘に関するリーダーに俺がなっちまったってことか?


「……」


 これはちょーっと不味くないか? い、いや別に嫌とかそういう訳じゃないんだが、思ってたのと少し違うっていうか、もう全然別人クラスなんだよなー。


「では、優勝者に自己紹介を含めて一言もらっていいかの?」


 え、ここで振られるのか? 不味い、なーんにも考えてなかったぞ? んーどうしよう自己紹介を含めって言ってたけど、何もいうことなんてないぞ?


「あ、あのーライトって言います。まさか優勝するなんて思ってなかったんですが、これからよろしくお願いします」


 俺がそう言った途端、その場がザワっと揺らめいたような気がした。なんだ、地震でも起きたのか? ゲームの中くらい地震からは解放させて欲しいんだが。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。ライトってあんた、第一回頂上決戦の優勝者か?」


 そして、一人の男が手をあげてそう俺に質問してきた。うん、まず君は誰かな? 人に名前を聞くときは自分からってもう鉄板すぎるだろ?


「あ、はい。い、一応、ですけど……」


 おいおいマジかよ、なんでこんな所に? 流石にガセだろ、、色んな声が聞こえてきた。


 え、そんなザワザワすることでもないだろ? なんでそんな皆んな驚いているんだ? 有名人が現れたわけでもないのに。


「フォッフォッフォ、びっくりしておるようじゃな。我も最初に其方の名を聞いたときはびっくりしたわい。しかし、これでようやく白黒はっきりついたのう」


 歯垢帝が急に出てきてそう言った。え、え? どういうことだ? それと相変わらず見た目と声が一致してなさすぎる。実年齢だけでもいいから教えて欲しい。


「え、これは一体、そのどういうことなんですか?」


「ふふっ、それを話すにはまずこのクランの成り立ちから話さなければならんのう。このクランはある一人の男に憧れた者たちが集まってできたものだ。その男はある時、土を掘っていた」


「土を掘っていた?」


「あぁ、そうじゃ。それを見ていたある一人はその男が出てくるまでずっとその穴を監視しておったのじゃ。しかし、いつまで経ってもその男が現れることはなかった。痺れを切らした男がその穴を覗き込むとそこには……毛一つ残らず消えていたのだ」


「そ、それが僕、であると?」


「そうじゃ。まさかこれほどまでに運命的な出会いをするとはな。では、ここで皆に宣言しよう。クラン、フンコロガシのリーダー、歯垢帝トゥースはリーダーの座を英雄であるライトに献上し、今日この日をもってリーダーの座を辞退する!」


 え、え!? ちょ、本当に理解が追いついてない。歯垢帝の見た目と顔のギャップもそうだし、クランのリーダーがどうのこうのもそうだし頭がパニック状態だ。


 って、え、改めてクラン名フンコロガシ、ダサくない?

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