第706話 斧の使い方


 魔王が斧かー。


 もう完全にその場の流れとノリと勢いで、お金も払って、斧を受け取ってしまった。


 しかも、大問題なが、意外と高かったってことだ。まあ、そりゃ初めて聞く属性武器だから、少しは値は張るとは思ってたが、俺の残りの財産をほとんど持っていきやがった。


 これはもうこの斧で確実に元を取るために当分の間は使わなきゃならない。


 ま、魔王として動くときはこの斧を使えば、人間と魔王のモードが区別できていいかもしれないな。ただ、斧を使う魔王ってどうなんだ?


 俺が無知なだけかもしれないが、そんなやつ見たことないんだが? 基本、剣か、杖か、槍とかじゃないのか? まあ、爆炎の魔王に相応しい武器をもらったんだ。どうにか使いこなして、このゲームのプレイヤー達に魔王には斧、というイメージをつけてやる!


 んー、とはいうものの、まだ使ったことないからなー。どこかで試し斬りがしたいんだが……


「おーう、やっと見つけたぜぇい。お前が騎士団長をぶっ飛ばしたって奴か。どんな奴かと思ってきてみれば、ただの人間クソ雑魚野郎じゃねーか。興醒めだぜ全く、早く終わらせて、飯と女を食いにいくか」


 適当に外をほっつき歩いてたら、急に声をかけられた。その声の主は狼の獣人のような姿をしていた。いかにも短期で喧嘩っ早そうな見た目だ。


 でもこれで、ちょうどいいサンドバッグ発見だな。多分こいつがさっきの騎士団長が言ってた閻魔様の刺客だな? ってことは俺も好き勝手やっていいってことだろうから、全力で試し斬りといきますか!


「ちょっと、俺の試し斬りに付き合ってもらうぞ」


「ほう、面白いことは言えるみてーだな。だが、寝言は寝てからだぜ、クソガキ、まあ今から死んでも眠れるようにしてやるからよ!」


 相手の武器はどうやらガントレット、つまり拳だ。そしてこちらの斧はクソでかい、俺の身長と同じくらい、いやそれ以上はあるかもしれない。


 ということは相性は近づかれたら不利で、距離を保てば有利となる。この斧の初戦、カチコミますか!


「どうせ近づかれなきゃ良い、とか思ってんだろ。顔に書いてあんぞコラ。あめーんだよ、人間風情が」


 そう言って敵の姿が消えた。


「クソ雑魚人間には俺の姿は追えないだろうな! お前はもう、死んでんだ」


「ん?」


「え?」


 敵の姿は消えたけど、ちゃんと出てくる場所も見えている。おそらく敵のスキルだろうな。肉弾戦にとても向いている。


 でも、、丸見えなんだよな。


「【爆炎魔法】、ノックバックボム」


 ッボン!


 説明文によると、威力は抑え目だが、兎に角ふっ飛ばしてくれる爆弾らしい。うん、便利だ。


 遠距離の敵は斧で攻撃し、近づかれたらこの爆弾で吹っ飛ばす。おー、なかなかそれらしい戦いじゃなかろうか。段々と方向性が見えてきたぞ。


「ふっ、これしきの攻撃が俺様に通用するとでも思ってんのか? やはり人間は貧弱だな。さっさと楽にしてやるからよ、さっさと諦めろよ、クソ雑魚がぁ!」


 ッボン


「おい! さっきから調子乗ってんじゃ


 ッボン!


「おい! ふざけんん


 ッボン!


「お


 ッボン!


 やべ、なんかこれ気持ちよくてハマっちゃうな。でももう流石に可哀想だから楽にしてあげるか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る