第670話 問題ありな従魔
俺は今、迫り来る敵がゾムに食われているところを、玉座の間から眺めていた。
いや、彼らはゾム相手に善戦した方ではなかろうか。拳で戦う系のプレイヤーを主体に遠距離攻撃も織り交ぜながら攻撃をしっかりと当てていた。
ただ、問題はゾムの方にあったみたいだな。俺も何故かよく分からないのだが、ゾムが攻撃を食らっても食らっても、まるでダメージを受けているようには見えないのだ。
プレイヤー達からしたら絶望だろうな。どんなに攻撃を加えても全然死ぬ気配はなく、むしろ徐々に徐々に味方の数を減らされていくという……
少し考えただけでも少し可哀想に思えてくるほどだ。
しかも、更に悲しいお知らせとして、やっとの思いで攻略した第一層も、海馬がパーティに出席していたからできただけであって、本来はもっと苦戦するはずだ。
いやー、反省会をしようと第一層のメンツのところまで行ったのだが、思いの他あいつらはがんばってた。海馬に良いところを見せたかったのだろうか。皆、ボロボロになるまで戦ってくれてたみたいだった。
皆のそんな姿を見てしまっては、反省会をしようという気持ちなんてどこかに消し飛んでしまった。
そして、この件に関しても問題はウチの従魔、海馬にあるわけだが、今回ばかりは宴を開いていたから仕方がないな、うん。当の本人はというと、酒を飲みまくった挙句、すぐに酔いが回って寝ていたようだ。
九つの首で
ん、ってことは、海馬は天魔大戦に参加していなかったのに、誰よりも張り切って酒を飲んでたってことか? おいおい、少しは自重してくれよ全く。
あ、そんなこんなしているうちにまた一人食われた。
ゾムの捕食シーンは何回見てもなんか残酷というか、グロいな。
数瞬前はなんとか生き物の姿を保っていた生命体が、次の瞬間、タダの化け物と化して、また元に戻るという不気味と、単純にその化け物の姿があまりにも異形すぎる、という二つの観点からグロいのだ。
それにしても、もう城の防衛はゾムだけで良いのではないか? そう思ってしまうほどの安定感を保ったまま、また一人、また一人と捕食していっている。
ただ、プレイヤーの成長速度というのは俺自身が一番よく理解しているつもりだ。今回も事故とはいえ、第一層を突破されたのは事実だからな。
今後も自身の強化に加えて、配下の強化も引き続き行っていかなければいけないな。
「あ、」
今、最後の最後まで善戦していた拳で戦っているプレイヤーをゾムがとうとう食べてしまった。そしてこれにて、プレイヤーの攻略は失敗に終わった。
最後の拳で戦ってた人、どこかで見覚えがあるのだが、どこで見たのだろうか? いや、ただの気のせいか? 俺、人と関わるというか出会うことがないからなー。うん、気のせいだな。
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