第653話 変異と影


 アスカトルが天使の小隊を倒した後も、天使の軍は何回かに分けてやってきた。


 その度にペレやアスカトル、終いにはアイスまでもが参加し始末していった。アイスの地上から天使たちを撃墜していく様は、さながら固定砲台のようにすら見えた。


 もう、何度目か分からない天使の襲撃の後、相手の陣営に変化が訪れた。それは、プレイヤー達に起こった。


 今までは、スケルトンとこちら側の三人で上手くやり過ごせる程度だったのが、天使がバフでもかけたのか、明らかに勢いが増したのだ。最初はなんとか持ち堪えていたものの、徐々に押され、戦線をジリジリと後退している状態だ。


 そして、その攻勢はまさしく異様そのものだった。


 だって、腕がロボットみたいに変な方向に曲がってるのに、それでも突撃してくるんだぞ? 流石に三人のプレイヤーも顔を引き攣らせて一時退避を選択した。まあ、急な反撃でダメージを食らってたし、回復を俺にしてもらう為にも妥当な判断だ。


 相手の有無をも言わせぬ特攻にどうしたものかと頭を悩ませようとした時、後ろから大きな影が差したのだ。


 俺はビックリして後ろを振り返るとそこにはアシュラがいた。正直な所、顔は見えなかったのだが自信満々に俺にいかせてください! みたいな顔をしていたんだと思う。


 俺はアシュラの気持ちを汲み取り、出陣させてやることにした。


 アシュラの活躍は目を見張るものだった。まあ、アシュラにとって一対多こそ最も活躍できる場所だからな。張り切っていたのも相まって物凄い勢いで敵プレイヤーを屠っていった。


 その減り方は、正に目に見えており、それを見た魔王側プレイヤー三人衆もやる気を復活させ、再び戦場に赴いた。


 その後は、相変わらず天使の小隊をウチの従魔が撃墜し、プレイヤーの戦の方も相手の数が減る一方だった。


 俺は、なぜ相手がずっと小出しに天使を放ってくるのか、そして、何故相手のボスは出てこないのかが、不思議で不思議でたまらなかった。


 そんなに小出しにできるなら一気に出した方が強そうだし、相手のボスが現れないと、俺が出る幕がなくなってしまう。せっかく戦闘モードできているのに、不完全燃焼は物足りない。


 そんなことを思っていた時だった。


 突如、戦場に異変が起きた。そして、その異変とはまたもや相手のプレイヤーたちの様子に起こったものだった。


「え、なんか単純に強くね?」


 相手プレイヤーが、アシュラに殴られているのに死んでないし、斬られても死んでないのだ。おかしい、そんなにウチの子の攻撃力が弱いわけがない。


 また、天使がプレイヤーにバフをかけたのだろうか?


 それにしても、先ほどですら十分狂気的だとは思ったが、今回はそれを余裕で超えている。アシュラに、プレイヤーに群がり、押し倒して、その味方のプレイヤーの人だかりを踏み越えて攻撃してくるほどなのだ。


 え、これは操られているのか? しかも、アシュラに斬られても死なないくらい強くなって?


 結構まずいのではないか?


 そう思った時だった。俺の踵にコツン、と衝撃が与えられた。振り返るとそこには……

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