第635話 転双


 俺は攻撃を食らった後、すぐさま天駆を使い空中に退避し、そのまま距離をとって地面に着地した。一旦、仕切り直しだ。


 すると、スカルとボーンはどこからともなく武器を装着した。スカルは盾をボーンは剣を、というように。


 アイテムボックスを持っているわけじゃあるまいし、一体どこから取り出したのだろうか?


 まあ、今はそんなこと関係ない。ここから更にギアを上げるつもりなのだろう。良いじゃないか、受けて立とう。俺は慢心ではなく、あえてこのままの状態で応援する。


 素の状態でどこまでいけるか知っておきたいからな。ただ、これだけは発動させてくれ。


「【叡智啓蒙】」


 全ての感覚を最大感度にし、分割思考も発動する。確実に正面から突破するのだ。


 ダッ


 始まりは唐突だった。示し合わせたように互いが動き、距離をみるみるうちに詰めていった。


 俺はギリギリまで相手の動きを見る。コイツら相手に先に動くのは悪者だと思う。相手の動きに対する対応力で勝つのだ。


 来た、ボーンが俺に向かって剣で攻撃を仕掛けてくる。だが、これは確実にフェイクだ。じゃあ、この二人ならどうする? 先ほどは二人が入れ替わって攻撃をしたよな? なら、もう一人スカルはどこにいる? 


 後ろだ。感覚が広い俺にはその手は通用しない。つまり、俺が目の前のボーンを攻撃する素振りを見せればすぐさまされ、先ほどそうよう刺されてしまう。


 ならば俺も目の前を殴るフリして、


「ココだぁああ!!」


 ッドガーーン!!



 やっべ、思ったよりも全力で殴ってしまった。大丈夫だよな? そう思い、探知を確認すると、


「え?」


 そこには、剣をもったボーンと、盾を構えたスカルがいた。そして、俺の拳はどうやらその盾で防がれていたようだった。


 やられた。二人が装着している、転双の拳はお互いの位置を入れ替えると言うともう一つ、どちらか一方に集まることもできるのだった。


 クソ、すっかりその効果のこと忘れていた。


 しかも、確実にもらったと思って最後の最後まで見る、って言った自分の言葉も守れなかった。これは防がれて当然の結果だな。


 だが、さっきみたいに俺が攻撃を食らったわけじゃない。むしろ相手の盾にダメージを与えたくらいだ。


 もうここからはちゃんと本気を出す。もう出し惜しみしてこれ以上ダサい魔王を見せるわけにはいかないからな。


 スカルとボーンは今までも凄いと思っていたが、今回でまた改めて評価が爆上がりしたな。


 その強さに、敬意を払って、


「【分け身】、【藕断糸連】」


 ダダダダダダダダダンッ!!


 うん、コイツらは強かった。それにこれからもっと強くなる。これからに期待だな。


 もう、アドバイスは必要ないかな? もし求められたらその時答えるようにしよう。


 そして、次は圧倒的強者にして俺の相棒、ハーゲンか。そういえばハーゲンと戦ったことなんて今までなかったんじゃないか?


 一体どんなことになるのか、今から楽しみだな。

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