第582話 スパルタでお茶目な城主


 ……どうやら、初めての挑戦者は入ってきた瞬間に死んでいたようだった。


 初心者プレイヤーが単身で乗り込んで来るとは、あまりに予想外過ぎるが、それにしても思いの外焦らされたように思う。


 これで、第一階層の、いや、このダンジョンの問題点が浮かび上がったな。そう、見えない敵の対処法だ。


 このような問題点は、実際に招き入れてみないとわからないものであるから、今回に限っては俺の勘違いということもあり、少しお得な気分である。


 ただ、毎度毎度こんな都合の良いようにことが運ぶわけもないので、予行演習や、実際に俺がこのダンジョンを攻略しようとしてみて、問題点を洗って行かなければな。


 そんな、問題点だけでなく、問題点の見つけ方まで教えてくれた、ファーストチャレンジャーには感謝しないとな。次見かけた時には、ゾムの切り身でも差し上げよう。


 ❇︎


『よし、というわけで今から鬼ごっこを開始する!』


 俺は直々に第一階層に降り立ち、そう高らかに宣言した。


『……ご主人様、何がというわけでなのかを説明を頂かなければ、鬼ごっこと急に言われましても、その……皆、困惑しております』


『……ゴッフォン! それはだな、、、』


 俺は、経緯を説明した後に、ルール説明も行った。ルールは簡単、見えなくなった俺を見つければ勝ち、というものだ。


 俺は隠遁を発動し、見えなくなった状態で第一階層を動き回る。そしてその俺を水流の動きだけで見つけ、補足することができたら勝利ということだ。


 もちろん豪華景品が用意されている。因みに、全員が勝利するまで続けるつもりではいる。まあ、少なくとも海馬は余裕で見つけられるようになってくれないと話にならない。


 第一階層とは、プレイヤーが初めて見るこの城の内部なのだ。手は抜けられない。


 ❇︎


『よっしゃあ! 見つけたああ!! あっ、、すみません、ご無礼を働いたこと、どうかお許しください。せめて命だけでも……』


 俺は一体どんな人物として捉えられているのだろうか、隠遁を発動した状態の中、水中でゴブリンシャークに捕捉された俺は、そんなことを考えていた。


 まあ、とりあえずこれで三十二体目の勝利者だな。良い感じに水中の見えない敵に対する抵抗ができてきている。海馬なんて、水流感知、なんてスキルもゲットしたようだ。階層主として、素晴らしい傾向だな。


 いい感じにことが進んでいたからだろうか、俺は周囲の警戒を怠ってしまっていた。そして、そんな時に限って嫌なことは起きたのだ。


『ご主人様、襲撃者です! う、後ろに!』


『ん? あ、【厭離穢土】…………あ』


 うん、これは事故だ。

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