第441話 渓谷


 港町で従魔達(ハーゲン)とパーティを開催したのだが、とても充実した気分を味わうことができた。


 そしてこれから、養った英気を活かして、旅に出ようと思う。まあ、旅といっても死に方を探したり、ダンジョンを探したりするだけなんだが。


 まあ、小さいことは気にしちゃダメなんだ。思い立ったが吉日、今から旅に出る!


 ❇︎


 そう言って意気込んだ俺はハーゲンに乗り、第五の街から東へとひたすらに飛んだ。ハーゲンの移動速度の速さが異常すぎるからどこらへんなのか分かりにくいが、とりあえず空を飛ぶのに飽きてきたら降りる。


 降り立つとなんとも言えない世界が広がっていた。


 そこは、大きな渓谷が広がっていた。


 平らな地面に突如出現している大きな谷というか、崖。何かあると確信させるその佇ままいは、恐怖感と好奇心を同時に押しつけてくる。


 こんなワクワクするものが目の前にあって、行かない奴は確実に男じゃない。しかもここはゲームだしな。いくっきゃねー!


「とうっ!」


 そう言って俺は全力で走り、大きく立ち幅跳びをした。


 スタッ


 爺さんの研究所でもう高いところから降りるのは慣れているんでね、不格好なすぎた姿を見せることはない。それに、今回はかなりの距離があったから着地体勢も整えやすかった。


 着地のコツは、地面に着く二秒前に天駆を発動することだな。


 着地をして周りを見渡すと、無数の赤い眼差しがこちらに注がれていた。


 おっと、俺は招かれざる客、少なくともだいぶアウェーのようだ。


 まあ、崖の下で光が届いていない所にはそりゃモンスターなりなんなりがたくさん湧いて出るだろうな。だが、それと引き換えに美味しいものもあるはずだ。取り敢えずコイツらをやってしまおう。


 もちろんやるのは俺じゃないぞ?


「いけ! スカルボーン、お前の出番だ!」


『『カラカラカラカラ』』


 うん、やる気は十分のようだな。出てきた瞬間に分裂し、対象を殲滅する為に動き始めた。そして赤眼の持ち主の場所に近づくと、その相手は、


 蠍だった。


 しかも割と大量にいて、更に硬い殻に覆われており、スカルとボーンの主要な攻撃方法である拳がなかなか有効打になっていない。これはヤバいのではないか? 流石に助太刀をした方がいいか?


 そう思って少し数を減らそうとしたところ、


『『お待ち下さい、ご主人様! もう少し私達にお任せいただけませんか? もし、やられた時はそれほどのものだったということで、私達は華々しく散りますゆえ……』』


 え、えぇ……

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