第415話 冒険者ギルド


 第二の街に到着するとそこは見覚えのあるようなないよう街並みが広がっていた。俺がいた第五の街なんかよりももっと活気があり、なんと言うかプレイヤー臭が物凄くする。まるでどこかタイムスリップしたような気分に襲われる。


 初期装備のプレイヤーの姿を見ると俺にもあんな時代があったのかと、懐かしさすら覚える。この光景を見せてくれただけでもギルドの人たちには感謝しないといけないな。


 さて、ここから遂に、ようやく、とうとう、ダンジョンに入れる訳だが、さっきのギルドの人に正確には冒険者ギルドの管轄だから、そっちに行ってみると良い、というアドバイスをもらった。


 ちょっとイライラしてたから、それが伝わってないか心配だった分、最後のアドバイスはラッキーだったな。


 そう言えば俺が冒険者ギルドに行くのっていつぶりだろうか。俺の記憶が正しければ、以前金策の為に素材を売りに行ったきりだと思う。売却の為にしか冒険者ギルドを活用していないと考えるとそれは少し勿体無かったな。これからはしっかり活用して行こう。


❇︎


 うちのギルドとは違い、大きな建物をどっしり構えている姿を見ると流石最大手、という感じがヒシヒシと伝わってくるな。何故かマウントをとられているような感じだ。隣の芝が青く見えるているだけだと自分に言い聞かせながら一歩一歩踏みしめて入って行く。


 中に入ると更にうちのギルドとの違いが際立った。人数が違うのだ、そのタイミングで切り取っても活気で溢れているし、生の躍動というか、明日への希望というかそんなもので詰まっている。いや、ギッチギチだ。


 これほど素晴らしいものだったのか。俺の所属しているところは基本閑古鳥が鳴いている。まあ、皆任務に行っているんだろうが、それでも他のメンバーに会ったことがない。メンバー同士会ってはいけないみたいな規律でもあるのだろうか。お互いをコードネームで呼び合う秘密結社みたく。


 そして俺の感動、驚きはまだまだ止まらない。なんと、受付が女性なのだ。それにビックリした。俺は女性が苦手だから男性の方がありがたいが、もうずっと暗殺ギルドの基本マッチョな受付としか接していない。あの人たちは安心感を得られる反面、圧が凄いんだ、圧が。


 それで優しければ良いが、たまに無愛想な人とかいるからな、やめてくれよ、って感じだ。そういう場合は俺も舐められるまいと思って全開放まではいかずとも少しオーラというかそういうのを放つようにしている。そうすると楽な場合が多いからな。


 だが、今回は気張らなくて済むようだ。なんせ相手がこっちに喧嘩腰じゃないからな、ちゃんと客として接してくれるだけで有難いってもんだ。たまに、家族みたいな人とかいるからな、うちのギルド、旧知の友達みたいな感じで距離詰めてくる人もいるから侮れない。


 受付の順番が来たようだ。受付する為に並ぶというのも新鮮だな。


「どうぞこちらへ! ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「はい、ダンジョンに行きたいと思ってるのですが、詳しく存じ上げないものでして、何か情報は頂けないかと思い、ここに来ました」


「左様ですか。当ギルドではダンジョン斡旋を行なっております。そちらをご利用になられますか?」


 おー、そんなこともやってるのか。それは助かるな。


「是非お願いします」


「分かりました。では、ギルドカードのご提示と、料金の2000Gを頂戴願います」


 ん? 金かかるのか? そりゃそーかタダではしないよな? あれ、ギルドカードって俺のやつでもいいのか?


「すみません、他のギルドカードって使えますか?」


「すみません、当ギルドでは冒険者用ギルドカードしか取り扱っておりません。もしかして、冒険者にまだなられていないのですか?」


 え、暗殺ギルドって使えないのか? 冒険者用ギルドカードってなんだよまじかー。


「は、はい」


「それでしたら、左手奥にお進みいただき、研修を受けて頂く形になります。その場合、5000Gを頂戴いたしますが大丈夫ですか?」


 なっ!? ご、五千だと? その前のダンジョンも合わせて七千もいるのか、流石に足りる気がしないぞ??


「もし、持ち合わせが無いようでしたら、ギルド支援金をご用意させて頂きます。一万Gをお貸しいたしますので、一万五千Gを冒険者登録後に返済してください」


 え、えぇ!?


 俺、ただダンジョンのこと聞きに来ただけなんですけど?

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