第383話 土産


「え、そうなのか? 生成はもっと簡単じゃないのか? だって、俺、もう既に一つ作ってるぞ……?」


 爺さんの元に最後の挨拶に来たところ、俺の狙い通りしっかり驚いてくれた。まあ、それはいいんだが、不可解なことを言われた。


 なんでも、伝授は簡単だが、生成はかなり難しいそうな。


 俺は、なんとなくでというか、気づいたら生成してたから、生成の方が簡単という認識でいたのだが、シンプルに驚かれた。そんな反応をされると、こっちも驚く。


「え、技生成ってイメージするだけでできるんじゃないのか?」


「なわけあるかい! イメージから始まりそれを具現化する為に一晩中常に考え続けるのを一年くらいかけて、そこから精度を上げていくもんじゃぞ? そんなポンポン作られたら儂らの面目丸潰れじゃわい!」


 なんかキレられてる。そもそも何故だ? 何故こんなにも簡単に技が作れたのか?


 考えられる理由の一つとして、プレイヤーである。というのが考えられる。プレイヤーはここの現地人、NPCのように一生を費やして、というのが物理的に無理だ。だから、ある程度の補助というか、生成しやすくなっているのかもしれない。仙人になった特典としてな。


 次に、俺が特殊である可能性。これはなんだか自分だけが特別と思ってる厨二患者みたいで嫌なんだが、そういうことではなく、単純に俺が持っているスキルによる可能性だ。俺は解脱を始め世界の神秘に触れやすくなるスキル、称号をいくつか持っている。それによって、技の生成もしやすくなった、とかか?


 ただ、これはなんかこじつけなような気もする。世界の神秘と技の生成に相関があるか怪しいし、勘違いだと恥ずかしい。まあ、端的にいうのならば、なんならかのスキルや称号によるもの、っていう可能性だな。


 うん、もう考えるのやめよう。どうせ考えても答えが出るものでもないし、普通に面倒臭い。よし、ささっとここに来た目的を果たそう。


「分かった。今回はたまたまだろうし、まだまだ精度も高くない、これから頑張って極めていくとするよ。それよりも、俺は爺さんに技伝授をしてもらう為に来たんだ。俺に技をくれ!」


「技伝授か、良かろう。自分の技を後代に引き継いでゆくのも我々の使命であり、本望だからの。こうして仙人は幾千もの時を経て生き永らえるのじゃ。受け取るがよい、儂の修行の成果を」


 いよいよなだな。この爺さんともお別れだ。まともに師匠なんてりおもったのとはないが、それでも最後の方は有益な情報提供してくれたし、まあ、許してやろう。


 爺さんが俺の額に指を二本つきあてて、


「【仙術】、技伝授、【千里慧眼】!」


 師匠がそう口に出していうと、俺の脳内にぶちまけるような情報が流れのように流入してきた。なるほど、これで技が使えるようになるってわけだな。使い方や、メリット、デメリットが直接叩き込まれた。


 よし、これだけの物をもらったんだ。しっかり頑張って悪魔も滅ぼしてやるぜ!


「ありがとうございました! ではまた!」


「あっ、おい!!」


「【纏衣無縫】、【隠遁】」



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