第350話 図鑑と図録
「あっ、」
見つけた。やっと見つけた。モンスター図鑑だ。図書館に限らずどんなお店でも俺は店員さんに聞くことが苦手だ。どこか気恥ずかしいし、なんとか自力で見つけ出したい、という気持ちが強くあるからだ。一日探して見つからなかったら、諦めて聞こうかとも思ったが、見つけられて良かった。
よし、これで毒を持っているモンスターを調べまくっていけばいいんだな。
「……」
太くねーか? 広辞苑なんかよりもよっぽど太く感じるんだが、まあ、持ってはいないから正確な大きさとかはわからないが、それでもかなりの厚さだ。ただでさえ最近本なんて読んでないぞ? もう、読む前から疲れてくるようだ。
その図鑑はスライムや、一番最初にお世話になったホーンラビットから始まって、多種多様なモンスターが延々と、もう延々と、ページをめくってもめくっても続いていた。たまに毒持ちがいるんだが、おそらく最初の方のページであるから全く強そうではないのだ。
なら、途中からページを開け、と思うかもしれないが、どうしてもこういうのは最初から読みたくなるタチなんだ。飛ばしたページにいたらそれこそ海に鍵を投げ捨てたような状況になるだろう? それはごめんなのだ。
モンスター図鑑と睨めっこを始めて数時間後、もうやめようかと思ったその時、
ーーースキル【速読】を獲得しました。
【速読】‥書物を読むスピードが速くなる。ただし記憶に残る割合は速度に応じて減少する。スピードは熟練度に応じて上昇する。
き、きたー! このスキルさえあれば俺はもう無敵だ。なんせ世界図録があるからな。記憶には残らなくても図録にしっかりと記録されていくはずだ。そうすれば俺はこの図鑑を買うことなく、そして持ち運ぶこともなく、この内容をいつでも参照することができるのだ!
そう考えた俺はもう、読みに読みまくった。次第にページをめくるスピードが速くなり、加速度的に読み進めていった。
気づいたらどのくらい時間が経っていただろうか、おれはふと声をかけられた。その時は読破率は七割ほどだった。
「お客様、お時間になりました。その本は借りられますか? それともご購入されますか?」
もう、閉まる時間になっていたのだった。
「あ、延長とかってできないですよね……」
「営業時間外でのご使用は、暗殺ギルドですとやはりAランクからの権限となります」
くそ、これもAランクからかよ。これは早急にランクを上げる必要があるかもな。
それに俺は世界図録があるから、購入することはもちろん、借りることもしたくなかった。面倒な手続きとかあるだろうし、俺は絶対に返さない自信があるのだ。別に返したくないとかではないのだが、忘れるだろうし、面倒くさい。
借りるというのは根本的に俺に向いてないのだ。
「わかりました。ではまた明日きます」
「ご利用ありがとうございました」
どうやらこの時間まで残っていたのは俺だけだったようだ。もう現実でもいい時間帯だろうし、今回はこの辺にしておこう。明日は遂に読み終えることができるからな。楽しみだ。
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