第316話 決勝戦


 とうとうこの日がやって来たようだな。頂上決定戦の最終戦、決勝だ。ここまではあっという間だった気がする。実際、このイベントの存在は半年前に告知されて、そこから待たされて、いざ本番だとたったの三回戦しかしないんだから、そりゃ短く感じるか。


 お、視界が切り替わった。このゲームに来てこの現象にも随分慣れたと思う。俺も結構長い間ゲームにハマってるんだな。


 最初に始めた動機はかなり不純だが、なんだかんだでここまで続けて、この場に立っている。俺なんかがこんな所に、っていう気持ちもあるが、それだけの努力もしてきた気はする。まあ、それを証明する為のこの決勝戦と考えれば全力で挑みたくなるな。


 そんなモチベーションになった俺は、目の前にいるはずの相手に視線、意識を向けた。すると、そこにはまさかの女性がいた。


「あら、やっとこっちを向いてくれたわね。ずっと考え事をしているみたいで寂しかったわ。決勝戦、同じ世界に立つ者同士お互い頑張りましょうね?」


 背は高くスラッとしており、顔も綺麗だ。そう、まるで芸能人だ。モデルだと紹介されてもなんら違和感の無いくらいだ。


 しかも、その眼光は穏やかで戦闘からは程遠そうなんだが、溢れ出るオーラは確実に強者のそれなのだ。これは侮れない、今までで出会って来た中で間違いなく最強の敵だろう。俺のパッシブスキルも今までにない反応を示している。あれ、


「ん? 同じ世界……?」


 その女性が言った言葉が引っ掛かった。同じ世界とはどういう意味だろうか、共にこのゲームをプレイしているという意味だろうか? それとも他に別に意味があるのか?


「ふふふっ、あなたも私と一緒でしょ? 同じ修羅の道を歩んでいる。これは強者に至る為の道、どちらが真の強者かここで決めましょう」


「なっ……!?」


 驚いた。まず、俺が無意識に言葉を発していたことだ。漫画じゃあるまいし、そんな無意識に言葉を紡ぐなんてあり得ないと思ってたんだが、本当に気になったのだろう。思わず口にしていた。


 そして、そのおかげと言ったらなんだが、それの返答でさらに衝撃の事実が伝えられた。そう、相手も俺と同じ修羅の道を歩んでいると言うことだ。どうやら俺と同じ穴の狢らしい、あれ? 使い方間違ってるか?


 まあ、修羅の道も俺だけだとは思っていなかったが、まさかこんな所で出会すとはな。神様ってもんがいるんなら、感謝しないとな、これほどまでにワクワクする敵を用意してくれたんだからな。


 俺の全力を出して倒してみせる。


「3、2、1、」


 さて、どうやってこの相手を攻略しようか。並大抵の攻撃じゃまともにダメージも与えられないかもしれないし、これは初手からギア全開でいかないとな。全神経を研ぎ澄まして……


「GO!!」


「【パキケファロ頭突き】っ!!!」


 初手にはこれしかないだろう! 速度、威力、効果、どれを取っても初撃に相応しい。それにこんな技、使っているのを見たことないだろうから、即座に対応することも難しいはずだ。俺も初めて使うしな。というわけで、しょっぱなから頂くぜっ!!


「あら、危ない。大地魔術【瓦解土崩】」


 ッドーーーン!!!


 これは確実に貰った。そう思っていたのだが、俺が頭突きしたのは強靭な土の壁だった。


「ふふふっ、イチゴの雷鳴魔法の方が速かったわね。これなら、案外余裕かしら?」

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