第296話 職人の妙


「では、次の選定に移るかの。次は、ゾーンと深謀遠慮、高速思考に危険察知と気配感知を選定する。今回はかなり量が多くなっているが、今回もいけると確信しておる。あらゆることを知り、自らが望む情報を手にするようなスキルになるじゃろう。選定、しても良いか?」


 お、多いな、一気に五つもいくのか。でも確かに危険察知と気配感知とかは一緒にした方がいいかもしれないが、こうも大胆に組み合わせてくるとはな。なかなかやるじゃないか、その技量とくと見せてもらおうか。


「頼みます」


「【ゾーン】、【高速思考】、【危険察知】、【気配感知】、【深謀遠慮】の五つのスキルが統合されます」



ーーースキル【叡智啓蒙】を獲得しました。



【叡智啓蒙】‥全ての感覚から得られる情報を精査し、必要な情報のみを得ることができる。スキル発動時は体感時間が低下し、相手の動きを先読みし、弱点も判定する。また僅かな違和感や差異にも気づくことができる。


 わーお、これは凄い。ただ数を並べただけではないかと思っていたがここまでのスキルになるとは。これは選定の真骨頂を見た気がする。単純な足し算ではなく、あくまでも掛け算、各々の良いところを掛け合わせ余すことなく活用していく。素晴らしいな。


 ただ、アクティブスキルになってしまったため、スキルを発動していればいいのだろうがボケーっとしている時に奇襲を仕掛けられると大変かもしれないな。それに、スキルを発動する時は体感時間も伸びるから気軽に使えなさそうだ。


 いや、体感時間が伸びるということはほぼノータイムで周りを警戒することができるということか? それならかなり良いかもしれない。面倒臭いが。


「おー! これはこれはまたまた良い感じに仕上げてしまったようだな! それに、このスキルは常時発動型にも切り替えられるようであるし、正に死角がないのであるな!」


 え? まじ? オンオフ切り替えられてオンの時は何もしなくても警戒してくれるのか? 完璧じゃねーか! 爺さんあんた凄いよ!


「ふふ、こんなにも童心に戻ったのもいつぶりであるかの。本当に楽しいわい。それでは次もいくぞ!」


 爺さんは爺さんでテンションが上がってるな。確かにこれはテンションが上がってしまうのも頷けるほどの出来だよな。


「次はメガヒールと救済之光じゃな。これは言わずともわかるじゃろうが、あえて言うならばこのスキルは全てから癒すスキルとなるじゃろう。選定、しても良いか?」


 ほう。まあ、今までの中で一番普通というか、結果が見えてる感じだな。だが、その分強さも分かる。後は掛け算でどこまで伸びるか次第だな。


「よろしくお願いします」


「【メガヒール】、【救済之光】が統合されます」



ーーースキル【慈愛之雨】を獲得しました。



【慈愛之雨】‥範囲を指定し、そこにHP、状態異常を回復させる雨を降らせる。雨は必ず垂直に降る。HPは自分の体力と同じ割合の分だけ回復する。


 つ、強い。しかも、俺との相性も抜群だ。同じ数値になるまで回復するとかだったら使えなかったが、割合であれば俺は基本的に100%であるため、十分に機能する。


 いや、十分どころか、その範囲にいれば全回復するって言ってるようなもんだろこれ。なかなかえげつない効果だな、おい。


 それにしてもこの爺さんはなかなかの仕事人だな。本当に外していない。この選定というシステムの裏側がどうなっているのかは分からないが、単純に尊敬に値するだけのことをしてもらっている。感謝しなければな。


「爺さん、本当にありがとうございます。どれもいいスキルばかりです!」


「気に入ってくれて何よりじゃ。それに礼はいらんぞ、私もこんなにも楽しいのは久方ぶりなのだからな。さて、まだまだ楽しい時間を続けるとするかね」


 え、まだ続くの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る