第197話 人種間問題
「ん? なんか聞こえるだべ?」
ほらな、ズボラ確定演出だろこれ。でもそれならそれで、なんでスーツなのかとか色々気になるぞ? しっかり一番上のボタンまで閉めてるしな。早く交流したいな。
そう思ってさっきからずっと声を掛けているんだが、なかなか反応してもらえない。只今絶賛、一寸法師の気持ちを味わっています。
なるほど、俺らから見た一寸法師は確かに一寸かもしれないが、一寸法師から見た俺たちは唯の巨人だったんだな。人間っていつも自分を中心に、自分達が当たり前で正しいと思い、自分達と少しでも差があれば、すぐに排斥する。そんな人間の闇を見たような気がする。
「おおおおおおおおおい、き! こ! え! ま! す! か!」
俺は、門番の鼻の目の前で思いっきり声を張り上げて、怒鳴り散らかしてやった。すると、ようやく、
「ん? なんだべお前。ちっこいくて虫みてぇだけど、なんで喋るんだべ? 潰していいだべか?」
いやいやいや、物騒すぎだろ。初手で潰すっていう発想出てくるか? もしかして巨人って戦闘民族だったりするのか? うわーこんなの無理ゲーだろ、勝てる気しねーよ。これって平和なルートないのか? あっ、もう潰され
グシャッ
いや、まあ、そう俺ってば死なないんだよな。
「な、なんでお前まだ生きてるんだべか? 今、おら潰しただべ!」
グシャ、グシャグシャ
いや、潰れなかったのならまずその理由を考えろよ。何回もすれば出来ると思ってるあたり、やはり脳筋ズボラか?
「お、おまえ、一体なんだべか? お、おらはこれでもかなり強い方なんだべ? それなのに何故死なないんだべ?」
「ふっふっふ、俺はお前と種族が違うんだよ。お前らに俺は倒せない。嘘だと思うのならば、ここで一番強い奴を呼んでこい。そしたら、白黒はっきりつくだろう」
「っ……。しゅ、首領ーーー!!」
門番は走って持ち場から離れ、首領とやらを呼びにいった。首領ということは、案外、小さい集落なのか? まあ、あの体型で何人もいたら流石に嫌だな。
よし、ファーストタッチはいい感じだな。ナメられるのも嫌だから少し怖目にいかせてもらった。もちろん、首領が来たらこんな態度は取らないぞ? 俺は普通に仲良くなって話を聞きたいだけだからな。
そうこうしているうちに、とうとう首領が来たようだ。うん、一目で分かるぞ、他の誰よりも大きいからな。ここからが本番だ。ここでミスったら大惨事になりかねないからな。集中して行こう。
「おいおい、何処に居るのじゃ、そのちっさき者とは、恐くて逃げ出したかの? 大きいのは口だけということか! はーっはっはーー! 所詮儂の前じゃどんな奴も、等しく小さく、軟弱な存在なのだ! おい、先程の門番を呼べ! 詰まらぬことで儂を呼び出した罰じゃ。顔パンの刑じゃ」
おいおい、こっちは仲良くしてやろうとしてたのに、初手から煽りかよ。やっぱり物騒だし、単細胞脳筋なんだな。それにあの門番、顔パンの刑って可哀想だな。完全に首領の気分でしかないだろう。流石に可哀想だから、俺からもコンタクトを取るか。もちろん友好モードは終了だ。
「おおおおおい! 俺は逃げも隠れもせずにここに居るぞお! どうした、恐くて、俺のこと見ることすら出来なくなったのか? デカイのは体だけなんだな!!」
首領の体がピクッと動いた。そして周りの取り巻き達の顔が一斉に青ざめた。もしかして、巨人に、そしてあの首領に大きいのは体だけって、一番言っちゃダメなやつだったか? でも、先に言ってきたのそっちだしな。やるならこっちもやるぞ? 徹底的にな。
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