第195話 新たな世界


ーーースキル【感染無効】を獲得しました。


 あんなにも苦しくて面倒臭かったゾンビ狩りが、範囲攻撃を使うだけでこんなにも楽になるとは思っていなかった。改めて、広範囲攻撃の強みと偉大さを感じることが出来たな。


 第十波を無事終えると、目の前に魔法陣が現れた。本当にこれだけとはな。もしかしてこの次にボス戦とかがあるのかもしれないと思っていたから、少しホッとした。次の街にいく前にまた新たに獲得したスキルを見ておくか。


【感染無効】‥状態異常:感染を無効にする。


 また、状態異常を無効にするスキルを獲得してしまったようだ。状態異常の感染は徐々に体の動きが悪くなって、他の状態異常にかかりやすくなり、最終的に HPまでどんどん削られていくらしいな。


 俺は、他の状態異常は結構無効化されてるし、HP自動回復があったから気づかなかったんだろうな。体の動きは……魔法使ってたし、気づかないのも当然か。


 まだ他にも状態異常はあるのだろうか。その全てを獲得することって出来るのか? 出来る事なら、イベントが始まる前に手に入れたいところだが、流石に厳しいだろうな。まあ、これだけ手に入ったことだけでも素直に喜ぼう。


 よし、ここでやる事は大体終わったか? この層ではあまり死んでないが、大丈夫だろう。それよりもこの層で初めて、自然環境ではなくなったからな。次はどんな世界なのだろう。


 少しワクワクしながら、次の階にいくと、そこは、雲の上だった。


「うわーーー! あ。【天駆】」


 開始直後に落下させられたが、天駆の存在を思い出せてよかったな。あのまま落ちてたらどうなっていたのだろうか。天駆でそのまま雲の上まで登ったあたりで優秀な従魔の存在を思い出して召喚した。


「ハーゲンっ!」


 最近はずっと戦闘要員だったからな。前はあんなに乗り回していたのに、すっかり忘れていたぜ。見た目もすっかり変わっちゃたしな。勿論、いい意味でだぞ?


 それにしても、雲の上かー。雲に乗れたら最高だったのにな。そこまで現実に忠実にならなくても、ここはゲームの世界だろ。遊ばせてくれよー。


 まあ、ここで文句言っても仕方ないしな、早速雲の上を堪能しようか。どんな世界が広がっているのだろうか。こういう非現実的な世界はどうしようもなくワクワクするよな。


 暫く飛んでいると、家のような建物が見えてきた。それも、一つじゃなく、沢山だ。でも、さっきみたいな現代式の建物ではなく、どちらかと言えば、中世寄りの、しかしゲームの世界よりももっと古い時代の建物のような気がする。学生時代の頃に学習した、平安時代の貴族のお屋敷、寝殿造のような建物、というかほぼまんまだな。それもただ一つというわけではなく、小さな建物もあり、まるで一つの街を形成しているかのようだ。


 雲の上に寝殿造と言う、相反しそうな組み合わせだが、絶妙にマッチして、幻想的な空間を生み出している。綺麗な眺めに見惚れながら、下降しつつ近づいてみると、なかなか近づけない。ちょっとハーゲンに本気を出させてみる。


「ん?」


 近づけば、近づくほど違和感が生まれる。まだ近づけるのか、と。そして、その建物群の元までくると、全貌がはっきりと掴めた。


 この街は超巨大なんだ。


 遠くから見ると、大きさがわからずに自分の中で勝手に大きさを決めてしまっていたが、近くに来てみるとそのスケールの大きさに圧倒され、常識がぶち壊される。だって、この目の前の門の柱の太さが俺の四倍くらいはあるしな。



 ん、門? 門といえば、門番? この巨大な世界の門番っ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る