第190話 必要性


「えっ?」


 俺がこの住宅街に来た時、先ほどの階層の流れで、ついつい気配感知を使ってしまった。すると、先ほどはたった一つの気配しかなかったが、今度は逆で、物凄い数の気配があったのだ。しかも、至る所に。


 これは逆に多すぎないか? 取り敢えず、その一つに向かって行くか。


 とても数は多いが、一つ一つの気配はそこまででも無かった為、なんの気なしに気軽にその場所に向かった。すると、その場所にいたのは、ゾンビだった。


「うぇー」


 現代社会にゾンビ、これ絶対製作者がやりたかっただけのやつだろ。俺らが住んでいてもおかしくないような場所に、ゾンビが普通に歩いている。なんというアンマッチ、いや、逆にありなのか? もう、よくわからないな。まあいいや、恐らく、気配にあったゾンビを全員倒せばボスが出てくるのだろう。早速やるか。


 うん、気配で感じた通りの強さだったな。弱くはないが強くも無いってところだな。一対一なら何回やっても負けないだろう。ただ、一対多になってくると少々面倒くさそうだな。よし、早速次のゾンビのところに向かおうか。


 そう思い、気配感知を使って見ると、


「なっ!?」


 先ほどまで感じていた、すべての気配が、ある一点を目指して殺到していたのだ。そのある場所とは、勿論、そう、この俺自身がいる場所だ。まさか、一体でも攻撃すると、全員で襲ってくるとはな。ハーゲンを出すかどうかで迷うなー。ハーゲンを出すと、全部あいつが一人でやっちゃいそうだからなー、今回も俺が一人でやろう。


 っと、徐々に集まってきたな。もうちょっとゆっくりさせてくれてもいいんじゃないかと思うけど、まあ、こっちに来て俺を狙うってことは、逆に狙われても文句言えないよな? というわけで、


「【怒髪衝天】」


 薬物をした時に、最初の高揚感とかが何かの感覚に似ているなと思っていたんだが、このスキルだったことを思い出した。薬物やった時に、大量の敵が欲しくなったことを考えて、逆に、大量の敵がいる時に、これを使えば気持ち良いんじゃね? ってことで使ってる。


 まあ、ゾンビ相手にするんだから、無理やりにでもハイにならなきゃキツいってもんよ。ゾンビは普通にいるだけで臭いのに、斬ったらもっと悪臭がする。更に、肉質もグチョグチョしていて、飛び散って気持ち悪いし、痛みとか無いから、なるべく一撃じゃないと面倒臭いし、良いことなんて、ないぞ? 素材も腐った肉だけだしな。旨味ゼロだ。


 ハイの状態、もといバーサーク状態とでも言うべきか。この状態だと、生き物を見るだけで、殺戮衝動のようなものが湧いてくるのだ。俺はそれを並列思考で遠目から見ているだけだが、これによって、本能に任せておけば、勝手にやってくれるのだ。楽ちんだ。


 それにしても、多いな。ってか、怠くなってきたなら、自分でやる必要ないのか。


「全員集合!」


 貴方たち、やってしまいなさい!


 言いたかっただけだ。それにしても、ハーゲンはともかく、他の三人もハーゲンに影響されてか、凄く好戦的になっている気がする。アシュラとかずっとカタカタカタって鳴らしてるし、スカル、ボーンは木になったことで、より人間らしく、ばっさばっさ相手を斬り伏せていっている。


 毎回、思うけど、俺の従魔が倒せない敵っているのか? 流石にボスは厳しそうだけど、ボスクラスを除いたら、もう殆ど敵無しだよな。なんでこんなになってしまったんだ? 最初は空路担当のハゲタカと、囮担当のスケルトンだったのにな。お前ら変わりすぎだろ。


 まあ、かく言う俺も、随分と変わっているのだろうけどな。


 あっ、もう、終わりましたか、そうですか。なら、ボスを探しに行きましょうかね。ボスは私めがやらさせてもらいますからね。はいはい、では、気配感知を使いましょうかね……


「えっ!?」

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