第189話 まさかの光景
今、何階層目なんだろうな、本当に。思い出すのも面倒臭いよな。ありんこ、ミノタウロス、ゴーレム、クラーケン、ハゲタカもいたか。あと、木もだな。これで全部か? 今、思い出せるのはこのくらいだが、他にもいただろうか?
それにしても、次の階層は雪原地帯か。こんな寒いであろう場所を平気で出して来るあたり、ここのダンジョンの難易度が見えるな。いや、それとも、他のプレイヤーのほぼ全員、が耐性スキルや無効スキルを持っているのか?
もしそうならば、持っていないプレイヤーは災難だな。俺はたまたま持っていたから良かったが、持っていないことを考えるだけでも震えるくらい、寒そうだ。
もう少ししたら、イベントもあるんだ。そこでいい結果を残す為にも、強くなって、この塔もクリアしたいな。このイベントでは、寒冷無効とか、そういった類のモノは粗方持っているんだろうな。その人達に勝つ為にも早くクリアしないとな。よし、先が見えなくても、
「【気配感知】」
これを使えば、どこかしらに行けるだろう、モンスターには出会えるだろう、そんな風に思って、何の気なしに使ったのだが、思ったよりも反応が少なく、小さかった。俺が感じることの出来た気配は一つだけだった。もしかすると、吹雪とかによって、気配感知が阻害されているかもしれないな。
まあ、とにかく反応があった場所に向かおう。ここにずっと留まっていても何も無いからな。
反応があった場所に向かうと、そこには、小さくて可愛らしい、真っ白な雪兎がいた。その兎を捕まえると、悔しそうな顔をした後に、俺の手を振り解いて、どこかへ走り去っていった。流石に追いつけるだろうが、見失ってしまった。気配感知を使っても、気配が一つも無くなってしまっていたから、探しようがない。
途方に暮れそうになった時、急に吹雪が止み、暖かな日差しが差し込んできた。雪原に日光って、とても気持ちがいいよな。寒いのは変わりないが、ほんわかする。なかなか好きな光景だな。
それにしても、なんで雪が止んだんだ? 俺は何もしてないし、時間もそれ程経っていないのにな。もしかして兎のせいか? でも、特に何をしたわけでも無いからな。ただ、捕まえて、逃げられただけだ。倒してすらいない。
「あ」
雪が止んだだけかと思ったら、いつの間にか魔法陣が目の前にあった。え、これでこの階層終わりなのか? え、俺、もう容赦なく、次の階層行っちゃうよ? いいの? 絶対何か飛ばしてる気がするけど、もう知らないからな。よし、行こう。
そして、魔法陣の中に入り、次の階層に転移すると、俺が予想だにもしなかった光景が広がっていた。そこは住宅街だったのだ。
え? 自然的なバイオームだけじゃ無いのか? まあ、確かに、自然だけとは誰も言ってないが、それにしても、住宅街って、雪原からの振れ幅考えろよ。急に現実世界に戻って来たみたいじゃないか。
それにその住宅街も、このゲームの世界のような、中世のヨーロッパ的、ほんわかしたファンタジー世界ではなく、ゴリゴリの現代社会。そう、俺らが住んでいる住宅街のようなんだ。
雰囲気ぶち壊しも良いところだろ。なんでまた、急にこんな世界を生み出したのか。ここに現れるボスといえば、ゴジラなのか? ゴジラを出す為だけにこの住宅街にしたのだろうか。まあ、まだゴジラは出てないし、ただの推測というか、妄想に近いんだけどな。
取り敢えず、進んでみるか。なんか現実世界を変な格好して歩いているみたいだから、嫌なんだけどな。まあ、割り切るしかないか。
それにしても、かなり細部まで作り込まれているようだ。一つ一つの家屋の中、それも、家具家電まで、細かい所までいうなら、コップのような物まで、完全再現されているのだ。まるで、現実世界をそのまま丸ごと持って来たかのように。
でも、そんなこと出来るのか? 一つ一つ、お宅を訪問する訳にもいかないだろうしな。え? 不法侵入じゃ無いかって? それは仕方ないだろ。災害が発生した時に、火事場泥棒をするのと同じくらい、仕方のないことだ。だから、気にしたら負けだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます