第89話 加護


 ふぅ、俺はいつの間にか死に戻りしていたようだ。確か、瞑想で四十くらいまでいって、新記録出せたはずなんだが……でも、これを考えてる時点でやり直しておかなきゃいけなかっただろうな。


 これを考えると、禅とかしてるお坊さんってなんなんだろうな。おかしいでしょ、無理だろー。でも、だからこそ、あんなにブッダは凄くて、多くの信者を集めているのか? まあ、そんなに宗教には興味はないからな、早く戻って瞑想を続けよう。


 始めるか。いつも、瞑想はお坊さんの真似をして、適当に胡座をかいてやっている。本当はちゃんとした座り方みたいなものがあるのかもしれないが、そんなものは知ったこっちゃない。やりたいようにやるだけ、がポイントだ。やりたくないものなんて、そもそも出来ないよな。よし、一、二、……


ーーースキル【乾燥耐性】を獲得しました。


【乾燥耐性】‥脱水によるダメージを軽減する。


「うぉい!」


 ってか、びっくりしたー! 急に来たな……それに死に戻ってるし。なんか変な感じである。さっきまでは胡座をかいている状態で身をつぶっていて、気づいたら第三の街で立っているんだからな。目を開けていて、エフェクトとか見えれば話は変わってくるだろうが、目を瞑っていると、何も見えないから普通にびっくりする。


 それよりも、スキルをゲットしたな。これで何回目の死かも覚えていないが、乾燥耐性かー。って、俺は脱水で死んでたのか。まあ、確かに人間、水飲まなきゃ死ぬからな。特に砂漠みたいな暑い所だと尚更か。現代風に言うと、熱中症で死ぬみたいな感じか?


 もしかして、俺の変温無効が無かったら相当キツいのか? だって、脱水で死ぬってなかなかヘビーでしょ。ま、いいか、さっさと無効にして、終わろう。もう、途中から集中力切れ始めてきたからなー。



 もう、どれくらい経っただろうか。耐性を獲得してから、一回の瞑想が長くなって、もう、訳がわからなくなってきた。何回死に戻ったのかも覚えてない。数のカウントについては、余裕で三桁を超えてもう四桁くらいまでいきそうだった気もする。でも、あんまり記憶もない、それに集中しすぎていたのだろうか。もうすぐで、宇宙の真理に到達出来そうな所で、


ーーースキル【乾燥無効】

   スキル【断食】

   スキル【隠遁】

   スキル【ゾーン】を獲得しました。


「【潜伏】は【隠遁】に統合されます」

「【集中】は【ゾーン】に統合されます」


【乾燥無効】‥脱水によるダメージを無効にする。


【断食】‥世界の神秘に触れる事ができる。使用後一時間、ランダムで加護を一つ獲得する。一日に一度のみ使用可能。


【隠遁】‥姿を完全に隠し、匂い、音、気配も完全に消した状態で行動可能。


【ゾーン】‥体感時間を更に引き伸ばし、潜在能力が引き出される。スキル使用時、STRとAGIを1.1倍にする。


 スキルをゲットした。なんか、思ってたより多いんだが、まあ、くれるなら貰うし、返せって言われても返すつもりはない。


 ちょっと色々ツッコミ所がある。まず、乾燥無効、こいつはまあいいか、そのままんまだし、狙ってたやつでもある。


 次に断食、断食ってなんだよ、それに世界の神秘に触れられるってヤバイだろ。それに一時間何らかの加護を受けられるらしい、これはかなり強いのかもしれない。


 そして、隠遁、これも狙ってた奴だな。でも、これは予想を少し超えてきたな。姿、匂い、音、気配を完全シャットアウトした状態で移動できるのはかなり強い。これさえあれば、どんな奴に狙われても逃げることが出来るな。


 そして、ゾーン。集中の上位互換のようだな。体感時間伸ばすだけじゃなくて、力も出るようになっている、まさしくゾーンなのだろう。現実でゾーンなんて経験したことないから、少し楽しみではある。


 うん、総じて今回のは中々良い結果だったな。スキルもいい感じだし、瞑想も出来たし充実してた……よな?


 よし、次はどこに行こうかな? 次は街の西にでも行こう。街の周辺ぐるっと探索したら、依頼を受けてもいいかもしれないな。取り敢えず、戻るか。


「ん? あれはなんだ?」


 帰ろうとした時に俺は、少し周と地面の色が違くなっている所を発見したのだ。少し周りよりも濃いだろうか、そんな感じの色合いだな。


 俺が小さい頃よくやっていたゲームでは、周りと少し色合いが違う場所、と言えば何かしらのアイテムが隠れていたし、色合いでなくても、不自然な場所というのはストーリーを進める上でキーになることが多かった。


 そういった経験があったからだろうか、俺はさして何も考えずに、近くに歩みより、それを確かめようとした。すると、


「え!?」

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