第88話 砂漠


 という訳で、飛び降りに行かせた。うん、正直に言おう、やっぱり面倒臭いわ。俺はもう女性そのものに少し嫌悪感を少し抱いてしまう程だし、そもそも関わりたくない。やっぱりゲームは一人でやるもんだな。


 ってか、強くなる為に俺を尾行するなんて、絶対ろくでもないやつだぞ、間違いなく。ということで、適当にあしらったので、俺は俺でやりたい事を進めますか。


 んー、今から悪魔のクエスト進めてもいいが、爺さんに話しかけて即戦闘とかになると勝てないだろうからなー。やっぱりまだ強くなることに集中した方がいいな。もうちょっと強くなってから悪魔に挑むか。


 取り敢えず、第三の街に入ろう。門の前で話しかけられたからな。あ、そうだ、もしあれば、潜伏の上位互換のスキルと、臭いを消すためのスキルとかを取得すれば、俺の事をつけても逃げきることができるよな。それらの取得も視野に入れていこう。


「おー!」


 第三の街に入った。するとそこには、今までの街とはまた違った街並みが広がっていた。始まりの街は始めたてのプレイヤーで溢れていて、今からゲームを始める期待感と高揚感で満ちた場所だった。第二の街は、プレイヤーも慣れてきて余裕もでてきたのか、雰囲気も変わって、小洒落た感じというのが出てきたように思える。


 だが、ここはまた違った雰囲気がある。まず何と言っても、雑音が少ない。シーンとしすぎている訳ではないのだが、心地良い静けさだ。それにちらほら騎士のようなNPCも見られる。ここはNPC色が強いのだろうか、それにプレイヤーが合わせていると言った感じだな。教会みたいな建物も見えるし、今までとは一風変わった街のようだ。


 プレイヤーもここまでくるとかなりの熟練者だし、皆各自、自分のやりたい事に専念しているのか、あまり見受けられない。各々の気品が高く、東京で言えば銀座みたいな感じだろうか? まあ、行った事ないからただのイメージでしかないが。


 まあ、観光にはそんな興味ないし、大体雰囲気は伝わったから、取り敢えず周辺の探索をしよう。良い場所があれば良いんだがな。まずは、東から行こうか。


 依頼を受けてそれに従って進めるのも良いんだが、たまには気の赴くままにふらっと探索してふらっと逝くのも悪くないだろう。一期一会って奴を大切にしたいしな。


 街を東の門から出ると、そこに広がっていたのは、砂漠地帯だった。確か始まりの街の北側にも砂漠があったと思うが、あそこは、岩石砂漠だったはずだ。その為、岩とかがかなりゴロゴロしていた。


 だが、ここは砂漠というイメージにぴったりな場所だ。ザ・砂漠、と言った感じである。気温も気持ち高いので、すこししんどい。これでも、俺の変温無効で少しはマシになってるのかもしれない。もし、何もなかったらダメージ食らっちゃうんじゃないか?


 んー、でも今の俺には死ねる場所は無いか? 砂漠といえば、この暑さがとても印象強いが、意外に死因として多いのは溺死らしい。いつかの、高校の蘊蓄先生が言ってた気がする。


 でも、それでも俺は溺死では死ねないからな。ここには用はないかな? 特殊なモンスターがいれば話は別だが……


 いや、待てよ、この暑さ、それも砂漠だ。ずっとここに居たらどうなるんだろうか。普段ゲームをする上で、水分補給等考えたこともなかったが、もしかすると、特殊な状態異常になるかもしれない。


 試しに、そこら辺に座って瞑想でもしようか。瞑想っていいらしいからな、現実ではやろうとも思わないが、ゲームでならする気が起きる。よし、やってみよう。


 あ、ここで潜伏でも使ってやれば、人目もつかないし、熟練度も上がるし一石二鳥だな。


「【瞑想】」


 瞑想のやり方で、昨日調べたんだが、数字を一から順に数えていくというやり方があるらしい。でも、その途中に別のことを考えたら、また一からやり直さなければいけない。今、別のこと考えてるから次はまた一からなのだが、俺はこれで三十もいかないんだよな。すぐに別のことを考えてしまう。


 これ、百までいけたら取り敢えず終わろう。よし、一、二、三、……




「あれ? ここは……」


 俺は死に戻りしていたようだ。

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