第76話 拍子抜け
〈Lv.75 サラマンダー 異常個体〉
気配感知の反応があった場所に到着すると、そこには、もちろんそこには、サラマンダーがいた。それも三体だ。ただ、
「あれ? なんか……違う」
思ってたのとは少し違った。気配感知の反応だと、もっと強大な存在だと思っていたのだが、こうやって相対すると、そこまでの覇気は感じられない。
どういうことなんだろうか。まあいいか、とりあえず、倒そう。倒してみれば何か分かるかも知れない。
徐に近づいてみる。すると、サラマンダー達は一斉に威嚇行動を取った。しかも、大爆音の鳴き声という形で。咆哮というには、少し圧が足りないが、耳を劈くような音量という点においては、咆哮にも引けを取らないかもしれない。まあ、三体もいるからな。
鼓膜って破れても死なないよな? でも、音を使って人って死なないのか? 耳元で大爆音が起こったら死ぬのか? まあ、やってみたくはないな。耳バグりそうだし。
おっと、話が逸れたな。といっても、双頭白虎の装備のおかげで、並列思考ができるようになったから、脱線しても難無く戦闘は行える。
威嚇行動の後に俺は急接近して、殴った。初見の印象ではそこまでの脅威を感じることもなかったから、武器は使わなくてもいけそうだ。あまり武器に頼っていてもあれだしな。
ただ、そんなに楽にはさせてはくれなかった。俺が一体に対して殴ると、一先ず殴ることには成功するんだが、他の二体が俺に向かって魔法を放ってくる。
それは火炎魔法で、まあ言ってしまえばただの炎だから、俺には効かないんだが、普通に鬱陶しい。目の前に超巨大なカーテンが現れる感じだ。それも実体がない分、余計に面倒くさい。これは一体一体確実に仕留めていかないといけなさそうだ。
よし、まずは左手側にいるあいつからにしよう。どんなに魔法を受けても気にしない。ただの邪魔なものとして流す。そして、攻撃する相手にはひたすら頭狙いだ。頭に打撃系の攻撃をしまくれば、恐らく脳震盪的な状態になるはずだ。
まあ、ならなくてもダメージは与えられるだろう。よし、いくぜ!
まずは接近と同時に殴る。勿論、相手も黙っちゃいない。前足で振り払うような攻撃や、体全体を使って押しつぶすような攻撃もしてくる。
それを俺は避けつつヒットアンドアウェイの戦法で頭に攻撃を加え続ける。連続攻撃の効果が切れないように、たまに胴体の方にも殴っている。
このサラマンダーはトカゲみたいな形状だから、側面からの攻撃に弱い。側面を殴ると必ず嫌がって、尻尾で全体を振り払う攻撃をしてくる。それを、ジャンプで避けつつ頭に攻撃する。こいつはもともとが弱いからかそんなに攻撃パターンも多くない。慣れてしまい、一体目か終わるとそこからは楽だった。
一体目の時にも他の個体は魔法だけじゃなく、普通に殴ってきたりもするが、上手く立ち回れば同士討ちも出来る。それを嫌がって最後らへんは魔法一辺倒だったが。
「よし、これで終わりだな」
「レベルアップしました」
お、これで74レベになったな。とりあえず100は目標にしたいところだな。
「ん?」
おかしい。気配感知の前の気配察知の方が反応している。これは最初に感知した、とても強い気配だ。ただ、居場所が特定できない。恐らくこの付近にいるはずなんだが、ぼやけているような感覚だ。気配感知をしても結果は同じだ。気になる。
「あ、【看破】!」
俺は忘れっぽいのだとつくづく感じるな。ふと思いだした看破は今まで何度かお世話になってるスキルだな。今回も頼む!
看破を使ってもそれほど変化が無かった。ただ、気配を感じる場所が狭まった、というか、範囲が限定されたような気がする。そこに向かってまた看破を放つと、また更に狭まった。
最終的に、人、一人分くらいの大きさにまでちっさくなってしまった。だが、それ以上看破をかけても反応しない。
せっかくここまで来たのに、ここで終わるのは少しもったないと思ったが、どうしようもないなー。とそんなことを考えながらじーっと眺めていると、
ーーースキル【隠蔽無効】を獲得しました。
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