第75話 異変
やっと装備を受け取ったな。中々良い装備で待った甲斐があったな、と感じている。
最後、店を出る時、爺さんが少し寂しそうにしてたのは気のせいだろうか。まあ、流石に気のせいか。あんな厳ついじじいが寂しいって感情を俺なんかに抱いたらそれはそれでどうなんだって話だし。
まあ、それは置いといて、イベントで優勝して色々言われたり、もらったりした中の一つに覚えてるのがある。
それは、今後また同じ形式のイベントには参加出来ないってことだ。それ以外はなんか聞き流してしまった。まあ、他にもイベントはあるらしいが、この予選がバトルロワイヤルで、決勝トーナメントがある形式のイベントにはもう出られないらしい。
だから、二連覇しようという目標は掲げられない。まあ、イベントの存在を知る前に戻っただけの話なんだがな。
逆に今回のイベントである程度自分の強さが確認出来たんだから、今からの、秘境探しに本腰を入れられる。
俺が死のうとしてたのを止めたのも絶景だからな。まだ見ぬ絶景を求めて、遂に、俺、動きます。
……そう言って、装備受け取る前も意気込んだけど、何処に行くか迷ってたんだわ。何処にいこうか。まあ、今思いつく、具体的な方法は三つあるな。
一つは、次の街に行くことだ。今はまだ第二の街を拠点にして活動している。今のトッププレイヤー達は恐らくかなり先へ進んでいるのだろう。そこまでは行かなくても、次の街くらいには行ってもいいかもしれない。
二つ目の選択肢は、今まで訪れた街、そして街周辺を再び探索し直すことだ。俺もある程度色んな場所に行ったつもりではあるが、虱潰しに探した訳でもない。まだまだ行けるところは沢山あるはずだ。
そして最後が、依頼を受けることだ。依頼を受ければ、自分も強くなれるし、色んなところを訪ねることが出来る。強くなりつつ、色んな場所を巡れる、一番無難な選択肢かもしれない。
うーん、悩みますな。どうしたもんかな。
はっ! 閃いた! この中の選択肢を同時にすればいいんだ! 例えば、第三の街に行きながら、その道中の依頼や、そこでの依頼を受ける。それか、今までの街での依頼を受けながら探索する。あー、なんだ簡単な話だな。
そうと決まれば、早速ギルドに行って依頼を確認するか!
ギルドに到着して、依頼を見てみると、第三の街での依頼やその道中の依頼は無かった。まあ、それもそのはず、向こうの街の依頼は向こうのギルドに置いとけばいい話だからな。妙案だと思ったんだが、意外と俺ってバカなのかもしれない……
気を取り直して、うん、普通にここの街の依頼を受けよう。そして、それをこなしつつ、まだ見ぬ景色がないか、探すぞ!
良い依頼、無いかなー。まだ行ってみたことのない場所が良いな。そうだな、北の火山の方面にはまだ行ってないからな。そこでの依頼は……
「ん? 凶暴化したサラマンダーの討伐?」
そこには見慣れない依頼があった。説明に書いてあるには、本来、サラマンダーとは弱い生き物で、火山の生態系ピラミッドの中では下の方に位置するらしい。そして、一般の冒険者でも難なく倒せるほどのものらしい。
だが、最近、そのサラマンダー異変が起きたようだ。その個体が巨大化し、そして火炎魔法まで扱うようになったらしい。異変が起きた個体は数体だけのようだが、倒すことが困難になり、手がつけられなくなってしまったようだ。
いつも並んでいる依頼とは少し毛色が違っていたため、目に留まった。これを受けてみよう。幸い俺にはより上級の爆炎魔法もあるし、最悪どうにかなるだろう。
火山、行くのは初めてだな。雪山は行ったが、火山とはどのような世界なのだろう。雪山は現実世界でも行くことは出来るが、火山は遠目に見ることしかできない。死火山なら話は変わってくるだろうが、今もグツグツいってるのは流石に無理だろ。あっちでも行けるのか? まあ、行けたとしても行かないが。
火山に入るのもあり得ない体験だし、少しワクワクするな。
「はーげーん!」
よし、火山に着いたぞ。よし、俺もだいぶ成長したからな。ただ、神速で全力ダッシュするだけじゃないんだぜ?
「【気配感知】! ……っ!?」
思ったより、大きな反応に少し驚いた。凶暴化したと言ってもそこまではないと高を括っていたが、これは気を改めないといけないのかもしれない。急いで行こう。
「【神速】っ!!」
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