第74話 爺さん
「ふぅ」
やっと、イベントが終わった。かなり準備してきたため、長かったという印象もあるが、あっという間だった気もする。
優勝したことで、景品を貰うことができた。お金もそうだが、他にもVIPルームエントリーシートという謎の券? みたいなものももらった。
どうやら、統合型リゾートのようなものらしい。少し興味はあるんだが、恐らく行くことは無いと思われる。一、二回程度なら行ってもいいと思うが、一度はまってしまってやめられなくなるのが怖いのだ。
折角、この世界の中でやりたいことがあるのだから、それを全てやり尽くした後でもいいと思う。
そんな訳で今回は、探索に行こう。死ぬのは月一って決めたし、優勝出来たことで、ある程度実力を身につけていることが分かったから、今、急いで強くならなくてもいいだろう。
綺麗な風景、感動する絶景を求める旅に出よう!
とは言っても、どこに行けばいいのか、何をすればいいのか全く検討がつかないな……
うーん、あ、そういえば装備を注文してたんだった! それを取りに行こう! あ、あの爺さんに聞けば何か教えてくれそうだな。経験豊富だろうし、何か知ってることくらいありそうだよな。
よし、そうと決まれば早速行こう。新しい装備ワクワクするなー。でも、この初期装備とお別れとなると、それはそれで少し感慨深……くはないか。そんなに思入れが強かった訳じゃないし。うん、
「ハーゲーーーン!」
少し間延びした呼び方になってしまった。でも、まあちゃんと来てくれたからいいか。
もう、すっかりお馴染みとなった鍛冶屋に来ると、いつもよりも1.5倍程薄暗かった。いつもがどのくらいか覚えてないし、知らないので、ぶっちゃけ適当なんだが。
この店に入ると、暗くて見えづらい、いや、ほぼ見えないのだが、奥に人がいる。その人が爺さんだ。最初は怖かったけど、二回目からは慣れてきたな。
「すみません、装備を受け取りに来ました」
「お、漸く来たかの、準備しておるぞ。
(こやつ、とうとう来おったか。双頭虎と思って気安く引き受けたのはよかったが、まさかの双頭白虎だったとは……本来ならば一週間で終わる所を一ヶ月に伸ばしておいて正解だったわい。なんせ、丸々一ヶ月かかったからのう。扱いにくくて、かなわんわい。
しかも、それのおかげでまた儂の休みが潰れてしまったからのう。もう、依頼は受けんぞ、断じて受けん。何が何でも受けんぞ)」
「うぉー! ありがとうございます!」
何やら爺さんから怪しいオーラが漏れている気がするが、勘違いだろう。気にしちゃダメだ。
それよりも、装備の方が気になるな。中々手強かった、ホワイトツヴァイタイガーの装備だからな。ってか名前長すぎだろ。俺も爺さんを真似して双頭白虎って呼ぼうかな? いや、それも長いわ。
では、早速を見てみよう。
うわー、結構カッコいいな。やはり男子はかっこいい物にそそられる。白を基調として、所々、黒、緑、金のラインが入っている。超かっこいい。カッコよすぎて言葉が出てこない。
・双頭白虎の防具 伝説級
ホワイトツヴァイタイガーの素材を元に作られた防具。双頭白虎の流麗さと恐ろしさを宿している。職人の技によって最大限に素材が生かされている。この防具を装備時、スキル【並列思考】を使用可能。
うーん。戦国武将の甲冑をもっとスマートにして体にフィットするようにした感じといえばいいだろうか、素直にかっこいい。
戦国武将の甲冑もかっこいいけど、防具という観点でみると、少し心許ないのとか結構あるよな。信長のとか、かなり挑戦的だしな。
おっと、少し話が脱線してしまったな。ここはまだ店の中だった。早速装備して、ここから出よう。
「素晴らしい装備、ありがとうございました! では!」
「(なに!? 何も頼まんのか? ……それはそれで酒がすぐに無くなってしまう、それに久しぶりの仕事で少し楽しかったのにそれが無くなればまた退屈してしまうではないか!
仕事受けるから何か依頼してくれ! 頼む! なんだその爽やかな笑顔は! こやつ絶対もう来んのじゃろう、それは何としてでも阻止せねば……)
また、来るといい」
「はい! ありがとうございました!」
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