第96話 懸念


「先ほどギルドから注意を受けた。先月からフロストシティ北部を守る都市軍駐屯地が暴走機械兵器による襲撃回数が高くなっていること、またそれと連動するように最近、北からの来訪者が全く訪れていないとの話がギルドからもたらされた。これ等の状況を踏まえると北部方面に大型キャリアーがうろついてるか、あるいは大規模の雪賊かネームドミュータントよる妨害で交通が閉ざされているのではないのかとギルドは懸念を抱いている、それ等の真偽を見極めてもらいたいらしく、ギルドは我々に依頼を申請してきた」


 デビスは出発前に注意事項と依頼内容を告げる。


「ターカーさん、キャリアーって?」

「警備ロボットを輸送する自動車両だ。種類は千差万別で輸送するだけだったり、火器が搭載されて展開した警備ロボット一緒に戦うこともある。特に後者が出現すると厄介だ」


 キャリアーの知識のないミオンはターカーに質問する。

 ターカーはキャリアーでも武装して戦闘に参加してくるタイプが厄介だとミオンに伝える。


「おいおい、行商隊の護衛しながら調査もしろとか無茶だぜ」

「いや、あくまで護衛依頼の片手間に……との事だ。これから訪れる集落や都市、道中で出会うキャラバンなどに、何か異常はなかったかと積極的に話を聞き込んでほしいそうだ」


 護衛メンバーの一人が不満を漏らすとデビスは補足するように説明する。


「依頼と言うことは報酬があるんだよな?」

「ああ、情報の有無にかかわらず報酬が支払われる。有益な情報に対してはDランク迄ならギルドランク一段階昇進、Cランクからは昇級必要期間の短縮だ」


 別の護衛が報酬の有無について聞けば、デビスは報酬について説明する。


「そいつは個人か?」

「報酬は全体報酬であることを約束させた。つまり、誰か一人でもギルドが有益と認める情報を報告すれば、俺たち全員基本報酬+ランクアップだ!」


 報酬が全体報酬であるとデビスが説明すると護衛依頼を受けた雪豹たちがざわつく。


「昇級必要期間って何です?」

「次のランクに上がるにはCランクになってから最低一年間の雪豹活動期間が必要なんだ。理由は帰ったらギルドにでも聞いてくれ」


 ミオンはデビスが言っていた必要期間の短縮についてターカーに質問する。


「皆さん、お静かに。それでは次にどのルートを通っていくのを説明します。道中での行動は皆さんに一任しますが、場合によってはルートの指示変更等はさせてもらいますので、どうかご容赦下さい」


 ギルドからの依頼の報酬で雪豹たちがざわついていると、デビスと入れ替わる様に行商隊の責任者である立派な顎髭を生やしたフェイブルが拡声器で話を始める。

 ミオンはもう少しランクアップの必要期間について聞きたかったが、断念してフェイブルの話を聞くことにした。


「我々も外の危険性はこれまでの道中で嫌と言う程に実感しています。ですが、ギルドに所属する各都市の雪豹達が見事にそれ等の危機を跳ね除け、我々を助けてここまで運んでくれました。フロストシティの皆さんも彼らに負けない位の……いいえ、それ以上の働きを期待します」


 そういってフェイブルは頭を下げる。


「まず始めに訪れる目標としましてはケンドール、そこから続けてシルバーパームと足を向け、次に……」


 フェイブルは立ち寄るルートを説明していく。

 最終的には十を超える集落をめぐり、最終目標地はハリウッドと言う都市に向かう。

 道中の天候や状況にもよるが、かなりの日数になる行程だった。


「が、最初にも言いましたが、各集落で話を伺った上で行き先を決める場合もございますので、どうか臨機応変に対応してくだい。それでは最後に……今回の依頼を遂行してくださる皆さんに対し、今の内にお礼の言葉を述べておきます。こう言うのも何ですが……誰かがで依頼を終える可能性もあるでしょう。ですが、此処に集った雪豹の皆さまを見れば、失敗だけは有り得ないとわたしは確信を抱きました。どうか、よろしくお願いします」


 そう言ってフェイブルが話を終えると、行商隊のスタッフが拍手をする。

 それに釣られる様にして各所から拍手が沸き起こり、責任者であるフェイブルはそれに対して一礼しながら自分の車両へと戻っていった。

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