第28話 彼女たちの理由
「私達は……ブケなの」
「ブケ? なにそれ?」
ミオンがリディ達に雪豹になった理由を聞くと、ブケという聞き覚えのない単語を聞かされる。
「ブケってのはな、元は旧世界の日本っていう国にあった制度で、本来は武家って言うらしいぜ。どういう制度かっていうと、プラントを見つけたとか都市にとって多大な貢献となる発見や偉業を成し遂げた雪豹などが市民権を得て、壁の中で暮らす市民の名称さ」
「へえ、そんな制度があるんですね……」
ターカーが補足するようにブケについて説明すると、初耳だったミオンは驚いたように感想を述べる。
「ん? 壁の中にいるなら雪豹になる必要はないんじゃ?」
ミオンはそこで疑問を抱く。
壁の中に住む市民達というのはスチームハイヴとプラントの恩恵を受けて、飢えと寒さを知らない暮らしをしているというのがミオンのイメージだった。
リディとイザベラがそのブケという市民なら、わざわざ凍死する可能性のある壁の外で雪豹という命の危険と隣りあわせ職業になる理由が分からない。
「ブケにはとある制度があってね。三代までの間に都市に対して貢献や奉仕が見受けられない場合はミヤコオチっていう一族郎党壁の外に追い出される制度があるの。私とイザベラはブケの三代目に当たる世代で、私達が都市に貢献しないといけないから、雪豹になったの」
「死んだ三人もブケの一族で三代目に当たる人たちでした……ブケ出身で三代目ということで意気投合してチームを組んで……ぐすっ……」
リディはブケ出身の自分達がなぜ雪豹をやっているかミオンに説明し、イザベラが死んだ三人もブケの一門で、同じ三代目同士チームを組んだと説明した所でこらえきれなかったのか、涙を流す。
「死んだ三人の家族は……このままミヤコオチ?」
「……私達もそうだけど、三人の親兄弟に親戚……一族郎党が雪豹になって貢献するために活動していますので、そのうちの誰かがプラントなど見つければ……」
ミオンが死んだ三人の一族がミヤコオチするのかと聞くと、イザベラが動ける一族郎党が雪豹になって活動していると答える。
「三人の遺体や遺品を回収するのも、家族の元に送るという意味もあるが、義務を果たさず逃げたと思わせない為でもあるんだぜ」
「それで回収を……」
ミオンは死んだ三人の遺体を回収するとターカーが言った時、疑問を抱いた。
雪豹というのは全てが自己責任。死んでも遺体は回収されず氷と雪の下に埋もれるのが当たり前だと思っていた。
最初はゴールデン・バックの方針かと思っていたが、ブケという一族の宿命の様なものが理由だったのかと納得した。
『マスター、ブリザードの勢いが緩やかになってきています。翌朝にはおさまっているかと思われます』
リディ達からブケについての話を聞いていると、ナビィがブリザードがおさまってきていると連絡を受けた。
(とりあえず、ブリザードが明けてから、活動再開かな)
外の様子を映し出すカメラモニターを見ながらミオンはそう思った。
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