十二天将飼殺し(5)

「素敵。やっぱりタモっち、お化粧したらサイコーじゃん!」


 トーキング・フレイムは目を輝かせる。


「私を、見ないで」


 同時に、大裳の目に包帯が巻かれ、目隠しとなる。


「『』!? 視覚が能力発動の重要なファクターを果たす夢遊者が!?」


 シークレット・グースの首をさらに締め上げながらもトーキング・フレイムは嬉しそうに解説する。


「タモっち! あたしね、昔から思ってたの。タモっちが、タモっちだけがあたしの本当の『理解者』なんだ~って!」


 うふふ、とトーキング・フレイムは笑みを浮かべる。


「そりゃあ、ユリもトーカも好きだよ? でもさ、タモっちだけはなんか違うんだ! だから、タモっち。あたしの『獏夜』に、入って?」


 トーキング・フレイムは大裳を誘う。支離滅裂だが熱意だけはこもった、空っぽの愛。


「いや」


 大裳はそう短く答えると、先程の衝撃で外れて床に転がっていた鉄製のドアノブを手に取る。

 すると、ドアノブにジジッ……と『』がかかった。


 モザイクの侵蝕はドアノブから手に伝わり、そして最終的に右腕全体とドアノブにモザイクがかかる。

 そして、トーキング・フレイムの首筋を目掛けて振りかぶった。


 だが、トーキング・フレイムは身じろぎ一つしない。

 それは彼女が再生能力を持っているからでも、大裳に向けている異常な執着心からでもなかった。

 単純にモザイクのかかったそれらをからだ。


 『モザイクをかけたものを見えなくする』。

 それが、未堂大裳こと全身包帯まみれの『ピクス・マミー』の宇宙夢『神隠し(アンダー・ブラインド)』の能力の一端だった。


「シークレット・グースを離して」


 右腕を振りかぶったピクス・マミーは、モザイクがかかったドアノブをトーキング・フレイムの喉元に突き刺した。


「かはッ……!」


 シークレット・グースを掴んでいた手が緩み、彼女は床へ落下した。

 まだ咳き込んでいるところを見るに、幸いまだ息はあるようだ。


 だが、喉を破壊しただけではまだ足りない。トーキング・フレイムは一度殺しただけではもっと強くなった上でまた再生してしまうのだ。


 ――ならばどうするか。


「だったら、宇宙夢を発動させなければいい」


 そう言うと、包帯姿の少女はツカツカとトーキング・フレイムに歩み寄り、頬に触れた。

 すぐさまモザイクが頬を伝い、目を覆う。


「あ、あれ……。何も見えない……」


 目にモザイクが入るにつれ、トーキング・フレイムの再生速度が落ちていく。


 『モザイクを目にかけることによって、その夢遊者の宇宙夢を強制的に解除する』。

 『神隠し(アンダー・ブラインド)』の二つ目の能力だった。


「暗い……。やめて! ここから出して! お母さん! ごめんなさい! もう勝手に友達と遊んだりしないから! 指の骨折らないで!」


 もはや再生すらできなくなり、喉から吹き出す血に構わず、絶叫するトーキング・フレイム。

 そして、それが彼女の最期の言葉だった。

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