第20話追放48日目の出来事2
「確かに人間は薄汚い生き物です。
テーベ様に見放されても仕方ないかもしれません。
ですが、今迄テーベ様に加護されてきた生き物でもあります。
全くどうしようもない生き物ではないと思います。
今一度機会を与えていただけないでしょうか?」
テーベ様は慈愛に満ちた顔でにっこりとアリスに微笑んだ。
「そうだね。
確かに闇に生きる多くの生き物達は、みな薄汚いところがあるからね。
人間だけを滅ぼすというのは片手落ちかもしれない。
でもね、闇に生きる者達は、陽の下に出れない生き物なんだよ。
人間も闇の中だけで生きるかい?」
「それは、私に最後の機会を与えてくださいませんか?
私の行動を見て、人間の処分を決めていただけませんか?
人間を闇の生き物に変えるのは、私の行いがテーベ様の期待に添えなかった時だけにしていただけませんか?」
「ちょっと脅かし過ぎたね。
人間が薄汚いのは最初から分かっていた事だから、、アリスの事で全ての人間を滅ぼしたりはしないよ。
滅ぼすのはこの国の人間だけに限定していたんだ。
だけど、アリスが慈悲を与えるというのなら、それでもいいよ。
ただね、アリスは厳しい決断を迫られることになるよ。
それでもいいのかい?」
テーベの言葉には慈愛がこもっていた。
アリスがまた傷つく事になるのが不安だった。
今度こそアリスには幸せになってもらいたかった。
アリスを月の眷属に変えてでも、ずっと側にいて欲しかった。
それくらい月神テーベはアリスに惹かれていた。
一方アリスも、テーベに身も心もゆだねたい気持ちだった。
テーベに甘え甘やかされる生活に惹かれ、このままでいたい気持ちで一杯だった。
それくらいテーベを愛していた。
でもテーベが本気で自分を心配し愛してくれているのが確認できたからこそ、甘えるだけではいけない、テーベの側に立てるだけの人間でありたいという気持ちが、更に確固たるものになった。
「構いません。
私は月神テーベ様に選ばれた聖女です。
テーベ様の御名を穢すような真似はできません。
テーベ様の御名を更に輝かせるような、そんな行いをしなければいけないのです」
「分かったよ。
本当はもっと長くアリスと甘やかな生活をしたかったのだけれど、私の名を穢さないために人を導くというのなら、誘惑するわけにはいかないね。
だけどね、アリスに厳しい決断を下させるわけにはいかないよ。
まだアリスの心の傷が完全に癒えているとは思えないのだよ。
誰にどういう罰を与えるかは私が決めるから、アリスは厳しい決断をしてはいけないよ、分かったね?」
「はい、ありがとうございます」
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