妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
第1話
「おのれ、許せん!
実の妹を苛め抜いて殺そうとするなど、私の婚約者といえども許せん。
いや、私の婚約者だからこそ絶対に許せん」
「嘘でございます!
誤解でございます!
私はイヴリンを虐めた事など一度もありません。
むしろ私がイヴリンに虐められていたのです」
「おのれ!
罪を認めるどころか妹を陥れようとするか?!
もう絶対に許せん!
死ね、外道!」
私は婚約者のジェイコブ王太子に本気で斬られました。
情け容赦なく、殺されそうになりました。
しかし基本怠惰な王太子です。
まともに剣術の鍛錬などしていませんでした。
一刀で私を殺せるような腕ではありませんでした。
私は顔に剣の一撃を受けましたが、九死に一生を得て、生き延びることができましたが、一生治らない醜い刀傷が残りました。
魔法使いがいなくなって何百年も経ってしまっています。
昔のように傷を残さずにケガを治す方法などありません。
痛み止めを処方されながら、顔を糸で縫うのですから、たいていの場合斬り口が醜く膨れ上がり、縫い目を境に歪んでしまいます。
顔の傷なら左右で歪んでしまうのです。
私は裁かれました。
私は公爵令嬢であったので、死刑にされることはありませんでしたが、王太子に対する不敬罪と、妹を殺そうとした殺人未遂の罪で、追放刑となりました。
王国の南方に広がる、広大な未開地に追放されることになりました。
国王と父上の慈悲で、ケガの治療が終わるまで、刑の執行が延期されています。
ですがこのような慈悲は欺瞞でしかありません。
国王と父上は知っているのです。
私が冤罪で陥れられたという事を。
国王も父上も、愚かで怠惰な王太子を補佐できるのは、私のような大人しくて公明正大な性格ではなく、勝ち気で悪逆非道なイヴリンの方だと考えたのです。
国王も父上も、支配者であり王侯貴族です。
個人的な感情よりも王侯貴族の責任を優先します。
特に父上は、宰相としてこの国の将来を考え長女である私を見殺しにしたのです。
それに、私を斬り捨てても、次女のイヴリンが王妃になれるのです。
王太子の愚かさを指摘するよりは、イヴリンが王太子を、未来の王を操ってキャンベル王国の実権を握る方を取ったのです。
私は抗弁するのを諦めました。
下手に抗弁すれば、追放刑が死刑に変更されてしまいます。
実質的には死刑判決ですが、死にかけた時に前世の記憶と知識を取り戻した私には、追放刑は自由への片道切符に見えます。
前世では一人が大好きで、煩わしい人間関係からは逃げていました。
ここで戦って勝っても、大嫌いな人付き合いをしなければいけなくなるだけです。
それくらいなら、よろこんで未開地に追放されます。
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