第30話

「オリビアのやった事は正しい。

 領主として当然の行為だ。

 領地を奪おうとするなら、それが例え王家でも戦うのが領主だ。

 アイラを殺したのも当然の事だ。

 親兄弟であろうと、領地を奪う事は許されない。

 繰り返して言う。

 オリビアのやった事は正しい。

 よくやったね、オリビア」


 父上が手放しでほめてくださいます。

 アイラの父親として、内心では哀しんでおられても、マクリントック公爵家当主としては、ほめるしかないのは分かります。

 王太子とアイラの行動を許せば、今度はいつマクリントック公爵領を奪われるか分からないのです。


 そしてそれは、マクリントック公爵家に仕える全士族も同じ思いです。

 王太子とアイラがマクリントック公爵家の実権を握ったら、家臣たちの領地を奪うのが目に見えているからです。

 父上は家臣達から厳し目を向けられているのです。


「そうですよ。

 オリビアのやった事は正しいのです。

 自信をもって胸を張りなさい」

 

 母上も私をほめてくださいます。

 うれしい事ですが、ほめるしかないのも確かです。

 子供、アイラの教育に失敗したのは母上です。

 まあ、でも、仕方がないともいえます。

 どれほど手塩にかけて育てても、持って生まれた性分はなかなか直せません。


「援軍は必要かね?

 必要なら領民を徴兵するが?」


 父上も王家と戦う覚悟をされているようです。


「その心配は不要でございます。

 アオとアカはもちろん、ベヒモス様も戦う気でおられます。

 王家王国が攻め込んできたら、鎧袖一触で滅ぼすことができます。

 わびも入れずに王城に籠るようなら、王城を地下奥深くにまで沈めると、ベヒモス様言われています。

 それよりも、王家王国が父上を攻撃しないか心配です。

 私を攻撃するのを避けて、父上や母上を人質にして、私と交渉しようとするかもしれません」


「はん!

 私を見損なわないでくれ。

 王家の軟弱な騎士に後れを取る私ではないよ。

 もし王家が攻めてくるようなら、逆に捕虜にして身代金をとってやるよ」


 父上はやる気満々です。

 全く恐れておられません。

 これなら少なくとも王家に味方する事はないでしょう。

 父上は忠義の人なので、個人的な好悪を押し殺して、正邪の判断を放棄して、王家に味方する可能性もあったのです。


「父上が王家軍に後れを取るとは思いませんが、総大将が先陣を切るのは悪手です。

 それに、家臣たちの手柄を奪っては恨まれてしまいますよ。

 ここは領都に籠られて、指揮に専念されてください」


「そのような事は分かっているよ。

 願望を口にしただけだよ。

 その言葉、そっくりそのままオリビアに返そう。

 それと、ジョージ。

 お前も戦場に出る事はならんぞ。

 今さら他の人間をオリビアの婿にする気はないからな。

 絶対に死ぬことは許さんからな!」


 あら、あら、あら。

 ジョージが意気消沈してしまっています。

 ですが父上が言われる通りです。

 私の婿は色々と大変なのですから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る