薄幸の公爵令嬢は魔王の生贄にされましたが、ツンデレ魔王に溺愛されました。
第1話
「ボースウィック公爵家令嬢テレーザ!
其方をジオノット伯爵家令嬢アンナを殺害しようとした罪で生贄の刑とする。
ボースウィック公爵家当主オンドジェイ。
本来ならば連座で死刑とするべきところだが、長年の忠勤により特別な計らいで助命するも、宰相の地位を剥奪し、領地での謹慎を命ず」
「はい」
「はい」
悔しい。
抑えようのない怒りがこみ上げてきます。
怒りで胸が燃え上がりそうです。
ですが、家臣領民のためには耐えなければいけません。
婚約者だった王太子マティアーシュが嫌らしい笑みを浮かべています。
私を無実の罪で生贄にする事で、意中の女を妃に迎え、諫言を繰り返す目障りな父上を排除できたのです。
心から喜びを感じているのでしょう。
副宰相アーバスノット公爵の長男フィリップは、全く表情を変えていません。
王太子のような隙は見せません。
隙を見せるような人間だったら、父上が排斥されていたでしょう。
いえ、父上は人の好い所がありますから、王国の役に立つ間は処罰せず、心を入れ替える機会を与えていたかもしれません。
結局同じ結末を迎えていたのですね。
「左将軍アダム!
罪人アンナを魔王の森に護送しろ。
絶対に自害をさせるな。
傷一つつけずに守り届けろ。
もし途中で何かあれば、代わりの生贄はアダムのカークランド侯爵家から出させるぞ、分かったか!」
「了解いたしました、国王陛下」
「右将軍ルーカス!
ボースウィック公爵オンドジェイを領地まで護送しろ。
オンドジェイも傷一つつけずに守り届けろ。
何かあればボースウィック公爵家が命を捨てて王都に攻め寄せてくる。
そんな事になったら、ルーカスのパーラメント侯爵家だけに迎え討たせるぞ。
分かったか!」
「了解いたしました、国王陛下」
よかった!
父上の命だけは助かるようです。
兄上が怖いのでしょう。
兄上は、左将軍と右将軍が配下の騎士と一緒に、束になってかかってきても軽く勝てるほどの剛の者です。
配下の騎士や徒士も、父上が鍛え上げられ、洗練した連携戦術を駆使できるだけの練度の猛者たちです。
その彼らが、剛勇無双の兄上に個々の武勇を鍛えあげられています。
惰弱な王家騎士団や王家徒士団など鎧袖一触です。
「天罰覿面とはこの事を申すのですわ。
悪は必ず滅びるのです。
侯爵家の権力を使って、私や多くの貴族令嬢を苦しめた罪。
魔王の生贄となって償いなさい!」
アンナ!
その言葉、そっくりそのまま貴女に返します!
王太子の権力を笠に、無実の父上と私を陥れた罪、必ず天罰が下る事でしょう。
ですが、父上や私がこのような冤罪をうけるなら、神など存在しないのかもしれません……
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