第5話

「キャァアァアァアァァァァ!」


「お嬢様、お嬢様、お嬢様ぁぁぁあ!」


 え?

 何事ですか?

 どうしたのでしょうか?


「であえぇえぇぇえぇ!

 魔獣じゃぁぁぁあ!

 魔獣がはりこんでいますぅぅぅぅ」


 魔獣!

 どこに?

 私はソフィアとエミリーの叫び声で眼が覚めました。

 魔獣が城に入りこんでいるなら一大事です。

 名目上の城代であろうと、臨戦態勢をとらねばなりません!


 一瞬心臓が跳ねました!

 私のベットの両横に強大な虎が寝そべっているのです!

 食べられてしまう!

 その恐怖で一気に血が足に下がりました! 

 二頭の虎が、私を食べようと口を開きます。

 喰われると、激痛を覚悟した時、ザラザラの舌で痛いくらい舐められました。

 痛いと思った瞬間、舌のザラザラが羽毛のように柔らかくなり、とても心地よい肌触りで舐めるのです。


 瞬時に、夢を思い出しました。

 大地の精霊ベヒモスに出会った事。

 保護に約束をしてくれた事。

 勧めてくれるままに、常に側にいてくれる護衛が欲しいとねだった事。

 今ここにいてくれる、赤天虎と青天虎を側仕えにつけてくれた事。


「アカ、アオ、本当に来てくれたのね、ありがとう」


「お嬢様、お嬢様、お嬢様!

 ご無事なのですね?

 魔獣を刺激しないでください!

 直ぐにジョージ殿が助けに参られます!」


 いけません!

 アカとアオの事を話していません。

 このままではアカとアオとジョージが殺し合ってしまいます!


「大丈夫よ、エミリー。

 この子達は大地の精霊ベヒモス様が私に使わしてくださった護衛なの。

 だからなんの心配もいらないわ。

 ジョージとアカとアオが喧嘩してはいけないから、止めてくださる?」


「何を仰っておられるのですか?

 気をしっかり持ってください。

 直ぐに助けが参ります。

 魔獣を刺激しないようにしてください!」


「だから本当に大丈夫なのよ。

 心配しないでいいの。

 この子たちはとてもいい子なのよ。

 昨日を一緒にたくさん遊んだのよ」


「お嬢様、お嬢様、お嬢様!

 お気を確かに!

 直ぐに、直ぐに助けが参りますから!」


 ああ、いけません。

 普段冷静なエミリーが慌てふためいています。

 でもそれも仕方ありませんね。

 アカもアオも見た目だけは、見た目だけはとても怖いですものね。

 昨日夢の中でたくさん遊んで、この子たちの優しい性格はわかっています。


「お嬢様はこちらか?!

 ジョージが参りましたぞ。

 直ぐにお助けいたします。

 今しばしご辛抱願います!」


 ガチャガチャと激しい音を立ててジョージがやってきました。

 いけません!

 このままでは本当に戦いが始まってしまいます!


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