第16話

「お初にお目にかかります。

 オバンド公爵家のファビオラと申します。

 これからもよろしくお願い申し上げます。

 これは父から預かってきたイザベラ様への献上品でございます。

 どうかお受け取り下さい」


 周囲の警護役が一気に緊張します。

 このような場で、直接献上品の受け渡しは厳禁です。

 呪いのかけられたものや、毒の含まれたモノを渡そうとする者がいるからです。

 ですが今回の相手は傍系とはいえ皇族で、公爵家の令嬢です。

 その場で邪険にしていいモノか私には判断できません。


「それはそれはよき御心掛けでございます。

 ですが少々不躾でございますな。

 とても公爵令嬢の優雅な行いとは言えません。

 これは臣が預からせていただきましょう」


「無礼者!

 士族の分際で王族に差し口をきくとはなにごとですか!」


「ほう?

 乱心されましたかな?

 本当にオバンド公爵がこのような真似を命じられたと?

 おかしいですな。

 先日の皇帝陛下のお言葉が伝わっていないのでしょうか?

 このような真似をなされれば、ファビオラ嬢御一人が処刑されるだけではすみませんぞ。

 オバンド公爵閣下はもちろん、オバンド公爵家に連なる者すべてが処刑されます。

 当然オバンド公爵家は取り潰しになります」


「おのれ、おのれ、おのれ!

 士族の分際で分を弁えない悪口雑言!

 陛下の威を借りた無礼な振舞い!

 皇族として命じます!

 この者を斬り殺しなさい!」


 信じられません!

 本当に狂ってしまわれたのでしょうか?

 このような場でこんな行動をとれば、殺されても仕方ないのではないでしょうか?

 それとも、皇族なら許されるのでしょうか?

 もしかしたら、謀叛をきっかけづくりなのでしょうか?


「主命により逆臣を斬る!」


 ファビオラ嬢に付き添っていたただ一人の戦闘侍女が、短剣を抜いて襲い掛かってきました!

 ファビオラ嬢が指輪に触れています。

 あの指輪は魔道具なのでしょうか?

 私を魔法で殺すつもりなのでしょうか?


「「ギャアァアア!」」


 一瞬の事でした。

 ファビオラ嬢の戦闘侍女が、ファビオラ嬢の横を抜けて私に襲い掛かろうとしたとたん、雷を受けたように硬直したかと思うと、絶叫と上げてその場に倒れました。

 ファビオラ嬢も同じでした、指輪に触れたと思ったとたん、、同じように雷を受けたように硬直したかと思うと、絶叫をあげてその場に倒れました。


「謀反人をつまみだせ。

 皇帝陛下はもちろん、皇太子殿下と皇后陛下にも急ぎお知らせしろ。

 刺客が放たれているかもしれん。

 皇太子妃殿下、背後関係を調べるために謀反人をこの場では殺しませんでした。

 慌てて動くと謀反人の罠にはまるかもしれません。

 しばしこの場でお待ちください」


 ジョセフがテキパキと裁いて指示をだしています。

 いったい何が起こっているのでしょうか?

 

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